2019 Fiscal Year Annual Research Report
血中がん細胞を無染色識別する「イメージング・バイオマーカー」解析技術の開発
Project/Area Number |
17H02757
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
安田 賢二 早稲田大学, 理工学術院, 教授 (20313158)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | ナノマイクロバイオシステム / 血中がん細胞 |
Outline of Annual Research Achievements |
(1)マルチイメージング・セルソーター装置技術の開発:前年度に引き続き、これまでの試作成果を踏まえて実用に必要な要素技術の開発を並行して継続推進した。まず①ソーティングの精度を決定する上で最も重要な、流路中を流れる微粒子の流速計測手法について、新たな計測法の原理検討に成功した。この手法は、異なるパルス長の2波長の単色光を同時にターゲットに照射し、各粒子が受ける照射時間の差で流速を正確にシングルショットの画像取得で計測する新規技術である。実際に微細流路を流れる粒子の流速分布を計測したところ、流路中の位置によって層流で予測される放物線状に流速が異なっていることが確認できた。また、②細胞サイズによる分画判断に必須である正確な細胞サイズの計測技術についても、上記①で得られた粒子の流速情報を利用して、運動する粒子の撮像したみかけの面積をその流速情報から補正して正しい面積を算出する技術の検証にも成功し、実際に正確な粒子サイズを取得することに成功した。さらに③計測制御ソフトウエアについても汎用性を確保するために汎用計測ソフトウエアに変換を行い実用性を確保する作業に着手し、動作制御を行うことが可能となるように設計に成功した。また、④前年度より引き続き継続して粒径の違いによって連続して自動的に選別するプレ選別機構の構造を改善し、特定の粒子サイズ範囲の細胞および細胞塊のみの濃縮を連続で行うことが可能なシームレスなマイクロ前処理流路系の技術開発も推進し、微細構造の形状の最適化を進めた。さらに、⑤細胞の分離精製技術としてアルギン酸カプセルに細胞を内包させて処理を進める技術について原理検討を進め、実際に細胞を取得することに成功した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
装置技術の開発については、実際に前年度までの研究成果を踏まえて大きな課題となっていた、微細流路中を流れる複数の微粒子の流速を1ショットの画像取得で正確に計測する技術を世界で初めて考案し、この原理を実証する実験にも成功した。これは重要であるにもかかわらず今までのイメージングセルソーターでは実現できなかった技術である。これによって撮影した画像を再構成して正確なサイズや形状を取得することを可能にした。この技術を含めて本科研費研究で得られた成果の知財化を行い、さらに海外企業への技術ライセンスを完了させた。また海外の国際医療機関ネットワークと協力してCTC評価を行う国際共同評価プロジェクトを構築することに成功し、この共同研究契約に基づいて本技術の有用性を評価するためのCTCクラスター評価の国際共同評価が今年度より開始できた。技術開発のブレークスルーとその国際ライセンス化、ならびに技術の国際共同評価が開始できたことから2019年度は「(1)計画以上に進展している」と判断させていただいた。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの試作成果を踏まえ、マルチイメージング・セルソーター装置技術の実用に必要な要素技術の開発を引き続き継続推進する。特に、これまでセルソーティングを実際に推進したところで課題となっていたものを解決する手法の検討を中心に進める。まず①ソーティングの精度を決定する上で最も重要な、流路中を流れる微粒子の流速計測手法について、2019年度に着手して原理検討に成功したる新規技術の原理検討を引き続き進め、実用化を目指す。また、②細胞サイズによる分画判断に重要な細胞サイズの計測技術についても継続して実用化のための検証・改良を進める。さらに③計測制御ソフトウエアについても汎用性を確保するために、汎用言語のコードによって記述した計測ソフトウエアへの変換を完了させ、さらに-FPGAへの改良の可能性を引き続き検討する。また、④前年度より引き続き継続して特定の粒子サイズ範囲の細胞および細胞塊のみの濃縮を連続で行うことが可能なシームレスなマイクロ流路系の技術開発を進める。さらに、⑤これまでのCCD受光素子をベースにした画像取得に代替する可能性のある新規センサー光学系を用いた細胞形状識別技術の原理検討にも着手する。また、⑥細胞の分離精製技術として、前年度より検討してきたアルギン酸カプセルに細胞を内包させて処理を進める技術についても実用化のための安定化手法の検討を進める。また、あわせて2019年度より開始した国際連携のなかで海外企業への技術指導や、国際共同評価を推進して、技術の更なる改善の方向性を検討するとともに、CTCクラスター計測の診断技術としての有用性の検証を実際の臨床グループと協力して明らかにしてゆく。
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