2020 Fiscal Year Annual Research Report
血中がん細胞を無染色識別する「イメージング・バイオマーカー」解析技術の開発
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17H02757
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
安田 賢二 早稲田大学, 理工学術院, 教授 (20313158)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | ナノマイクロバイオシステム / 血中がん細胞 |
Outline of Annual Research Achievements |
前年度に引き続き要素技術の開発を並行して推進した。まず2019年度に原理検討に成功した異なるパルス長の2波調の単色光を同時に用い各粒子の流速を正確に計測する新規技術の原理検討を引き続き進め、細胞サイズによる分画判断に重要な細胞サイズの計測技術についても、得られた粒子の流速情報を利用して、的確なソーティング制御を可能にした。粒子の流速によって変化した撮像した粒子のみかけの面積の増大を補正して正しい面積を算出する技術の開発にも成功したことから、これらの成果を論文として発表した。 次に、測制御ソフトウエアについても汎用性を確保するためにLabView言語のコードによって記述した計測ソフトウエアに変換を行い実用性を確保することを完了し、動作時間の課題は残るものの機械学習ベースでの細胞塊の分離にも成功し、また機械学習の手法の難点や課題も明らかにすることができた。 さらに細胞の分離精製技術として、アルギン酸カプセルに細胞を内包させて処理を進める技術の長所が明らかになったことから、アルギン酸カプセルに細胞を内包させて処理を進める技術についてキャピラリーを用いた粒子サイズの一様化と微小化の原理検討に成功し、さらにアルギン酸粒子のソーティングのためのゼータ電位の定量的評価を進めることができた。 またCCD受光素子をベースにした画像取得に代替する可能性のあるリニアセンサー光学系を用いた細胞形状識別技術の原理検討を進めることができ、実際にリニアセンサーアレイを用いることで低速ではあるがシームレスな細胞画像が取得できることを確認した。 ハードウエア技術の開発に並行してアルギン酸カプセルに内包した細胞塊の形状を的確に抽出する画像処理ソフトウエア技術の開発も進め、開発した上記各粒子の流速情報取得技術を活用してアルギン酸カプセル内の細胞塊像を正しい像にリアルタイムで補正する技術の開発にも成功した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
装置技術の開発については、前年度に実証実験に成功した微細流路中を流れる複数の微粒子の流速を1ショットの画像取得で正確に計測する技術を組み入れたイメージングセルソーター技術の開発に成功しこれを論文として発表することができた。また、前年度より開始された海外企業への本特許の技術ライセンスと、この企業と海外の医療機関ネットワークと協力したCTC評価を行う国際共同評価プロジェクトへの技術移転と海外での国際評価装置の共同運用を開始することができた。技術開発成果の知財化とその着実な実証研究成果の論文化、またこれらの国際ライセンス化、ならびに技術の海外移転とこの国際評価装置での国際共同評価が開始できたことから2020年度は「(1)計画以上に進展している」と判断させていただいた。
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Strategy for Future Research Activity |
(1)マルチイメージング・セルソーター装置技術の開発:最終年度となるため、これまで開発してきた要素技術を組み込んだ原理検証システムの完成を目指す。あわせて前年度までで検証してきた要素技術の成果をシステムに組み込むための最適化を進めるとともに、その過程で、各要素技術についての論文での発表等を進めて成果をまとめる。まず①ソーティングシステムの光路系を簡素化して光路を最小にすることでイメージ像の減光を最小にして、前年度までに開発した照射時間の異なる2波長像の同時計測による流路中を流れる微粒子の流速計測手法を組み込んだ光学計測系とすること、②アルギン酸ナトリウム粒子に組み込んだ細胞の分画に最適なセルソーティングチップ形状の試作とシステムへの組み込み、③アルギン酸ナトリウム粒子内部に埋包された細胞形状を抽出して判断する画像処理アルゴリズムの最適化とこの判断に基づいたフィードバック制御によるターゲット粒子の回収技術、の3つの要素を組み入れたイメージングセルソーターシステムの試作を進める。 さらに、前年度より開始したこれまでのCCD受光素子をベースにした画像取得に代替する可能性のあるリニアセンサー光学系を用いた細胞形状識別技術の原理検討も引き続き開発と評価を進め、可能であれば上記イメージングセルソーターシステムのイメージング素子に並列で組み込むことで比較評価を進める。 (2)セルソーター技術の国際評価: 上記、ハードウエアの開発に並行して本学からの本研究成果についての特許ライセンスを通じて進めているシンガポールチーム(NUSを中心とした評価チーム)との血中がん細胞の共同評価を継続して進めて、知財技術の医療診断での有効性の確認を進める。
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