2017 Fiscal Year Annual Research Report
筒状マイクロエンベロープ内壁に構築するグラフェンバイオインターフェース
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17H02759
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Research Institution | NTT Basic Research Laboratories |
Principal Investigator |
上野 祐子 日本電信電話株式会社NTT物性科学基礎研究所, 機能物質科学研究部, 主幹研究員 (30589627)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
手島 哲彦 日本電信電話株式会社NTT物性科学基礎研究所, 機能物質科学研究部, 研究員 (90779183)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | グラフェン / アプタマ / 自己組み立て / 生体分子 / バイオセンサ / 蛍光 / 3次元構造 / 生体適合材料 |
Outline of Annual Research Achievements |
分子や細胞を内包可能な中空の3次元構造体(筒状マイクロエンベロープ)を,生体適合性の高い材料を用いて作製し,構造体内部に,生体分子の認識反応を可視化するセンシングプラットフォームを構築することを目指す.前年度までに,2次元平面に固定したグラフェン表面に,分子認識機能を有するDNA(アプタマ)を修飾したバイオインターフェースを用いて,リアルタイムな生体分子の追跡に成功している. 今年度は,分子認識能を有するグラフェンを最内壁とする筒状マイクロエンベロープを安定に構築する条件の確立を行った.ガラス基板上に犠牲層となるアルギン酸ゲルを形成した上に,シルクフィブロインゲル,ポリパラキシレン(パリレン)の2種類の生体適合性高分子材料を積層し,さらにグラフェン膜を転写した多層薄膜を形成した後に,光リソグラフィ技術を用いて任意の二次元形状(例えば800 × 300 μmの長方形状)に成型した.この後,2次元平面と類似の手法を用いて,グラフェン表面に蛍光色素標識したアプタマを固定した.この工程において水溶液を用いるとアルギン酸ゲルへのダメージが生じるという問題があることが分かったが,ジメチルホルムアミドを50v/v%以上含む水溶液を溶媒および洗浄液に用いることで,ダメージを回避できることが分かった.この薄膜積層基板にキレート剤を添加して犠牲層を除去すると,上層の薄膜が基板から遊離され,グラフェンを最内壁とする中空の筒状マイクロエンベロープが自己組織的に形成されることを確認した.形成した筒状マイクロエンベロープの雰囲気中に,アプタマと結合する分子を添加すると,内壁から蛍光発光が観測された.3次元センシングのプラットフォームとして動作することを確認した. 以上の結果について,招待講演を含む国内外の学会および論文発表を行った.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今期は,分子認識能を有するグラフェンを最内壁とする筒状マイクロエンベロープを安定に構築する条件を確立した.ここでは,最内壁のグラフェン表面において,生体分子の認識反応を可視化するための表面修飾法について,2次元平面で問題とならなかった犠牲層へのダメージを回避する方法を見出したことが大きな進捗である. さらに,積層膜の膜厚や二次元パターンなどの条件による構造との関連についても明らかにした.具体的には,例えば800 × 300 μmの長方形状において,パリレン層の厚さを100nm~300nmの範囲で変化させると,層が厚いほど筒状エンベロープの直径が大きくなり,70~150μmの範囲で変化するという定量的な依存性を確認した. また,形成した筒状マイクロエンベロープを用いて,複数のタンパク質の蛍光検出に成功し,3次元センシングの動作を確認した. 以上の進捗状況は,ほぼ計画通りに遂行できたことを示している.
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Strategy for Future Research Activity |
今年度は,3次元センシングの展開として,グラフェン表面に修飾するアプタマの種類を,これまでに検出デモンストレーションに成功している種類に加えて細胞外分泌物の検出を想定したATP やアルブミンを標的とするアプタマを用いた検出を行う. また,各標的分子に対するセンサの応答(感度,選択性)の評価は,共焦点レーザー走査顕微鏡を用いて,蛍光強度の測定により行う.蛍光強度は,例えば励起光強度変化や焦点位置など,微妙な条件の違いにより大きく変化するため,筒状マイクロエンベロープを顕微鏡の視野内に並列して設置できる実験系を構築し,応答を並列評価する系を実現することによる定量評価を実施する.このため,種々の形状を検討し,並列測定に適したパターンを最適化する.さらに,場所と時間によるエンベロープ内壁の蛍光応答の変化を,蛍光イメージのタイムラプス測定を行うことで定量的に評価し,エンベロープ内部における分子拡散抑制効果について明らかにする.
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Research Products
(6 results)