2019 Fiscal Year Annual Research Report
分光学的手法を駆使したπ電子デバイスの動作状態の解明
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17H02764
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
岸田 英夫 名古屋大学, 工学研究科, 教授 (40311633)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | π電子デバイス / グラフェン / 共役系高分子 / ドーピング |
Outline of Annual Research Achievements |
π電子物質は様々な電子デバイスに応用されている。デバイスとして動作している状態においては、電場印加、光照射等さまざまな外的な要因により電子状態が変化していると予想され、その理解は重要である。本研究では、デバイス中におけるπ電子物質の電子状態の解明を目的に研究を進めている。2019年度は、特に電気化学ドーピングにより制御された電子状態の解明を主な目的として研究を進めた。
前年度までに引き続き、イオン液体によりドーピングした単層グラフェンについて研究を進めた。これまでイオン液体ドーピングセルを用いて多数回のラマン散乱測定を行ってきており、サンプル依存性や測定位置による変化などの情報が得られている。そこでこれらの多数のデータを統一的に理解するために解析を行った。スペクトル解析から得られたパラメータについて詳細な検討を行い、ドーピングによる電子状態の変化とその起源に関する考察を行った。また、光励起後の緩和現象の詳細を明らかにすることを目的に時間分解発光測定を行った。ドーピングレベルの変化に伴い、発光減衰の振る舞いに変化が見られた。ドーピングによるフェルミエネルギーの変化と緩和過程の関係を明らかにした。
また共役系高分子についてもイオン液体によるドーピング状態について研究を進めた。この研究で用いているイオン液体ドーピングセルは電極面積が数mm角以上ある。これは種々の分光法が適用できるという利点である一方で、空間的に均一にドーピングが行われるかについても確認が必要である。ラマン散乱法を用いてマッピング測定を行いドーピング状態の空間分布について明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
イオン液体ドーピングセルを用いた単層グラフェンのドーピングに関して実験が進んでいる。同一構造のドーピングセルに対して複数の光学的実験手法を適用し、総合的に電子状態の考察が行えるようになってきているため、順調に進展していると判断できる。
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Strategy for Future Research Activity |
イオン液体ドーピングセルに対してさらに種々の分光法を適用し、ドーピングされたπ電子物質の電子状態についてより詳細な知見を得る。具体的には、赤外領域におけるより感度の高い測定を目指す。またこのドーピングセルを用いたレーザー分光をさらに展開する。
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Research Products
(6 results)