2018 Fiscal Year Annual Research Report
Physics and applications of chiral magnetism
Project/Area Number |
17H02767
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Research Institution | Osaka Prefecture University |
Principal Investigator |
戸川 欣彦 大阪府立大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (00415241)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
高阪 勇輔 岡山大学, 異分野基礎科学研究所, 特任助教 (60406832)
岸根 順一郎 放送大学, 教養学部, 教授 (80290906)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | キラル磁性 / 位相コヒーレンス / 集団ダイナミクス |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、位相コヒーレンスなキラルソリトン格子の集団ダイナミクスにより内発的に生じる巨大スピン応答を検出し、キラル磁性応用の基盤学理を構築することを目指している。単軸性キラル磁性体が固有に示すと期待される離散化・多値化やスイッチングや非局所応答などのスピン応答の機能性を実証する。本年度は精密輸送計測、高周波ダイナミクス計測、電子顕微鏡観察などを通じた物質機能開拓に注力し、キラル磁気秩序の安定制御と機能発現に寄与する数多くの重要な知見を得た。 具体的には、磁場中のキラル磁性体の電気の流れやすさにダイオードと似た方向依存性が存在し、キラル磁気秩序の形成に伴って信号の非対称性が大幅に増大することを見出した。キラル磁性に起因する電気磁気キラル効果の初めての報告である。単軸性キラル磁性体に固有に働く表面バリア機構を解明した。表面バリアが消失する磁場と臨界磁場の比は4/π^2(~0.4)という普遍的な値で定められ、巨視的応答の起源となることを実証した。この表面バリアのためキラルソリトン格子が離散・多値応答を示すことを磁気共鳴実験において示した。同時に、集団運動に特有のモードが現れることを見出した。キラル磁気共鳴やスピン波伝搬特性を解析する上で重要な出発点となる。希土類系キラル磁性体におけるキラルソリトン格子の存在を電気輸送測定により検出し、ロックイン現象など離散応答を見出すことに成功した。基盤学理構築に向けて、キラル磁性を舞台に光、弾性、プラズモン場などの結合系が構築されることを見出した。 これらはいずれもキラル磁性応用の基盤学理を構築するための重要な研究成果であり、論文発表や学会発表を精力的に行った。昨年度に引き続き、招待講演の機会を多数いただいた。また、国際学会を7月に奈良にて主催した。こういった機会を活用し研究プロジェクトとその成果の紹介など啓蒙活動に尽力した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本年度は研究計画を踏まえ、単軸性キラル磁性体において位相コヒーレントなキラルソリトン格子が発現しうる物質機能の開拓に注力した。初年度から取り組んでいる“スピン応答の離散化・多値化”、“キラルソリトン格子の構造制御性を用いたスピン応答のスイッチング”、“位相コヒーレンスを介した非局所スピン応答”などの研究項目を更に深化させた。 物性計測・物質合成・理論班が協同してキラルソリトン格子のスピン応答の基本特性を明らかにした。物性計測は電気輸送特性やマイクロ波特性の精密計測、電子線磁気イメージングなど相補的な実験手法を用いて多角的に進めた。キラル磁気秩序が巨大な非相反電気特性を示すことを世界で初めて明らかにした。集団ダイナミクスの理論モデル構築に努め、表面バリアが磁気秩序の安定発現およぎ離散応答の発現に大きく寄与することを見出した。これによりキラル磁気共鳴データのモード解析が大きく進展している。加えて、ホモキラル巨大結晶育成や結晶キラリティと磁気キラリティの相関に関する研究は金属化合物系に展開するなど順調に進展している。学理探求の観点からキラル磁性を舞台に光、弾性、音波などとの結合系が構築されることを新たに定式化することに成功した。いずれも想定を超えた研究成果である。 これらの研究成果について学会発表と論文発表を進めている。招待講演の機会も数多くいただいており、研究プロジェクトのアピールに尽力した。国際学会を7月に主催し、参加した多くの国内外の研究者と活発に意見交換を行い、国際共同研究を加速させている。これらの研究の進捗状況を踏まえ、本研究計画は当初の計画以上に進展していると判断する。
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Strategy for Future Research Activity |
物性計測・物質合成・理論班がより一層協同して、研究項目(1)キラルソリトン格子の位相コヒーレントな集団ダイナミクスの基本特性の解明、(2)巨大スピン応答(磁気モーメント流、スピン起電力、スピン波スピン流など)の検出、(3)スピン応答の機能(離散化・多値化、スイッチング、非局所応答性など)の開拓、(4)対称性とキラル物質機能の相関の解明、および、キラル磁性応用の基盤学理の構築 を進める。 物質合成班が作製に成功した良質なホモキラル単結晶試料において、集団ダイナミクスに伴う磁気共鳴やスピン波伝搬やスピンダイナミクスに伴い発生する微小電力の高精度・時間分解計測を進める。理論班と協力して、位相コヒーレントなキラルソリトン格子が示す巨大スピン応答とその物質機能を活用するための基盤学理を構築する。キラル磁性の基盤学理を踏まえ、キラル磁性応用のシーズを見出す。
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[Presentation] キラル磁性体CrNb3S6において観測されたスパイク状ESRシグナルの試料サイズ依存性2019
Author(s)
澤田祐也, 吉澤大智, 高阪勇輔, 秋光純, 岸根順一郎, 島本雄介, 戸川欣彦, 美藤正樹, 井上克也, 中野岳仁, 野末泰夫, 萩原政幸
Organizer
日本物理学会第74回年次大会
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[Presentation] カイラル磁性体CrNb3S6薄膜における磁気輸送測定2019
Author(s)
川原遼馬, 谷口祐紀, 河上司, Youssef Aziz Alaoui, 荒川智紀, 乾皓人, 島本雄介, 高阪勇輔, 戸川欣彦, 新見康洋, 小林研介
Organizer
日本物理学会第74回年次大会
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[Presentation] ESR measurements of the chiral helimagnet CrNb3S62018
Author(s)
Y. Sawada, D. Yoshizawa, Y. Kousaka, J. Akimitsu, J. Kishine, Y. Togawa, M. Mito, K. Inoue, T. Nakano, Y. Nozue, M. Hagiwara
Organizer
International Symposium on Chiral Magnetism (kai-mag2018)
Int'l Joint Research
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[Presentation] Fabrication and electrical measurements of CeNb3S6 thin films2018
Author(s)
R. Kawahara, H. Taniguchi, T. Kawakami, Y. A. Alaoui, T. Arakawa, A. Inui, Y. Shimamoto, Y. Kousaka, Y. Togawa, Y. Niimi, K. Kobayashi
Organizer
International Symposium on Chiral Magnetism (kai-mag2018)
Int'l Joint Research
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[Presentation] 軟X線磁気円二色性によるキラル磁性体CrNb3S6の軌道角運動量の観測2018
Author(s)
美藤正樹, 大隅寛幸, 鶴田一樹, 小谷佳範, 中村哲也, 戸川欣彦, 獅子堂達也, 黒田文彬, 岸根順一郎, 高阪勇輔, 秋光純, 井上克也
Organizer
日本物理学会 2018年秋季大会
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[Presentation] カイラル磁性体CrNb3S6薄膜における磁気抵抗測定2018
Author(s)
川原遼馬, 谷口祐紀, 河上司, Youssef Aziz Alaoui, 荒川智紀, 乾皓人, 島本雄介, 高阪勇輔, 戸川欣彦, 新見康洋, 小林研介
Organizer
日本物理学会 2018年秋季大会
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