2017 Fiscal Year Annual Research Report
反転対称性の破れた磁性半導体(Ge,Mn)Teにおける強磁性と電気磁気交差相関
Project/Area Number |
17H02770
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Research Institution | Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
田口 康二郎 国立研究開発法人理化学研究所, 創発物性科学研究センター, チームリーダー (70301132)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 磁性半導体 / 強磁性 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は、(Ge,Mn)Te系の強磁性転移温度増大のため、試料合成後のアニール条件の最適化を行った。高温でのX線回折の結果から、500 K程度の温度でMn原子の再配列が起こりやすいことが判明したので、この温度で長時間のアニーリングを行った。その結果、強磁性転移温度が200 Kを超えることに成功した。これは、磁性半導体として最も盛んに研究されてきた(Ga,Mn)As系の転移温度を超えるものである。 さらに、徐冷した試料およびアニール処理した試料で、SPring-8のビームラインBL44B2 を使って粉末X線回折を行い、Mn濃度が低く菱面体歪の大きい相R1、およびMn濃度が高く菱面体歪が小さい相R2、の存在を仮定して、リートベルト解析を行った。その結果、徐冷またはアニール処理により、高温状態におかれた時間が長い試料ほど、Mn濃度の高いR2相の割合が大きく、高い強磁性転移温度を示すことが明らかになった。このことは、前年度までに報告したMn不均一分布の透過電子顕微鏡による観察結果と合致している。また、Mn濃度の高い立方晶が現れ始めると、強磁性転移温度は減少することが明らかになった。このことは、菱面体歪を保ったまま、できるだけ多くのMnイオンを導入することにより、高い強磁性温度を得ることができるということを示している。これは、今後の希薄磁性半導体開発を行う上で、物質設計の指針となることが期待される。 また、今年度は、周辺物質を探索しており、Ge欠損したGeTeにおいて生じる超伝導の転移温度がドーピングによって増大することを見出した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
磁性半導体の分野においては、強磁性転移温度が低いことが最大の問題の一つであり、転移温度の上昇は重要な課題となっている。今年度は、アニール条件を最適化することによって、これまで最も盛んに研究されてきた(Ga,Mn)Asの強磁性転移温度を超える転移温度を得ることができた。これは大きな意義をもつ重要な成果である。さらに、超伝導転移温度の上昇などの当初予期していなかった結果も得られている。以上、研究は概ね順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
Ge欠損による超伝導は、反転対称性の破れた構造において起こっており、興味深いものでるが、転移温度が低く、希釈冷凍機を用いた測定が必要になる。反転対称性の破れた構造を保ったまま、ドーピングによって転移温度を高くすることができれば、超伝導特性の測定が大変興味深いものとなるので、このような転移温度の向上を目指した物質開拓を行う。
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