2018 Fiscal Year Annual Research Report
反転対称性の破れた磁性半導体(Ge,Mn)Teにおける強磁性と電気磁気交差相関
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17H02770
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Research Institution | Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
田口 康二郎 国立研究開発法人理化学研究所, 創発物性科学研究センター, グループディレクター (70301132)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 超伝導 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、GeTeにIn ドーピングによって生じる超伝導の振る舞いを調べた。Inドーピングによって、まず縮退半導体から12%程度のドーピングによって、絶縁体へと変化し、さらにIn をドープすることによって、再び金属相があらわれ、低温で超伝導が生じることが明らかになった。また、この絶縁体化が起こるドーピング量12%付近を境に、キャリアの型はホールから電子に変化し、また、低温での結晶構造は、極性のある菱面体晶から極性のない立方晶に変わることも明らかになった。12%以下では、Inドーピングによって単位格子の体積は減少するが、それ以上では逆に増大することも明らかになった。 さらに、超伝導状態の比熱測定を行ったところ、臨界ドーピング量を超えると状態密度が出現し、単調に増大する。超伝導転移温度の振る舞いは、理論計算とは一致せず、InTeの極近傍でのみ、急激に増大することが明らかになった。 さらに、価電子帯と、内殻電子の光電子分光測定を行った。フェルミレベルのシフトは、ホール効果測定から予想されるものと同様に、最初は電子ドーピングでホールを減少させ、臨界ドーピングを超えるとホールが増大する振る舞いとなった。また、内殻のスペクトルからは、Inドーピング量が12%を超えて超伝導が発現する領域で、In の価数が、3価から、1価へのと徐々にクロスオーバーすることが明らかになった。中間領域では、両者は共存している。 このことは、この系の超伝導に価数スキップが関係している可能性を示唆しており、今後の更なる研究が必要である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
反転対称の破れたGeTeにおいて、ドーピングによって強磁性を誘起したり、超伝導を誘起したりすることが明らかになり、様々な基底状態を見出すことができたため。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、(Ge,Mn)Teの単結晶化を試み、電子顕微鏡観察によって、ネール型のドメイン壁の観察を試みる。また、スピン波の非相反伝播などの観測も試みる。
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