2019 Fiscal Year Annual Research Report
反転対称性の破れた磁性半導体(Ge,Mn)Teにおける強磁性と電気磁気交差相関
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17H02770
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Research Institution | Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
田口 康二郎 国立研究開発法人理化学研究所, 創発物性科学研究センター, グループディレクター (70301132)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 超伝導 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、GeTeにIn ドーピングによって生じる超伝導の振る舞いを論文にまとめて、Physical Review Lettersに発表した。内容は、昨年度の実験によって明らかになっていたことであるが、Inドーピングによって、まず絶縁体へと変化し、さらにIn をドープすることによって、再び金属相があらわれ、低温で超伝導が生じる。また、この絶縁体化が起こるドーピング量を境に、キャリアの型はホールから電子に変化し、また、低温での結晶構造は、極性のある菱面体晶から極性のない立方晶に変わる。さらに、内殻電子の光電子スペクトルからは、Inドーピング量が12%を超えて超伝導が発現する領域で、In の価数が、3価から、1価へのと変化しており、価数スキップが超伝導に影響を与えている可能性を示唆するものであった。この結果は、超伝導転移温度上昇に貢献する可能性があるため、今後の更なる研究が必要であり、重要な意義をもっている。 さらに、一連の(Ge,In)Te試料に対して、遠赤外から紫外に至る広いエネルギー範囲の光反射スペクトルの測定を行った。上述の縮退半導体‐絶縁体-超伝導転移に対応する反射率スペクトル、および光学伝導度スペクトルの変化が観測された。また、価数スキップ現象に対応するスペクトルの変化も明瞭に観測され、更なる実験的な確証を得た形である。詳細なデータ解析を現在行っており、今後理論研究者との共同研究により、その定量的な理解を深める必要がある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
反転対称性の破れた系における電気磁気相関を当初は、主な研究トピックとしていたが、研究の進展に伴って、新しい超伝導相および超伝導転移温度上昇に寄与する可能性のある価数スキップ現象が見出されたの、そちらに重心を移して研究を行っている。
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Strategy for Future Research Activity |
このまま超伝導状態の電子状態を光スペクトル測定などのプローブによって検証し、また、InTeの近傍で見出されている僅かなストイキオメトリーの変化によるTcの変化等についても考察を進める。また、GeTeおよび類縁物質のSnTeに関連したトポロジカル転移などについての研究も行う。
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