2018 Fiscal Year Annual Research Report
Time-resolved SP-STM study of spin dynamics in ferromagnetic nanostructures
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17H02779
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
岡 博文 東北大学, 材料科学高等研究所, 助教 (70374600)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
米田 忠弘 東北大学, 多元物質科学研究所, 教授 (30312234)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | スピン偏極STM / ナノ構造 / 電圧ポンプ・プローブ / 非弾性トンネル分光 / 時間分解測定 |
Outline of Annual Research Achievements |
走査型トンネル顕微鏡・分光法によるCoナノ構造内に形成された電子定在波の観察を行い、電子定在波を形成する波数ベクトル(または波長)を高速フーリエ変換解析により導出した。その波数ベクトルの電子エネルギー依存性からCoナノ構造の表面状態のバンド分散を明らかにした。Coナノ構造の表面状態がナノ構造への閉じ込め効果から量子化されていることを確認し、量子化された準位それぞれのエネルギー半値幅を求めた。そのエネルギー半値幅は、準位のエネルギーが大きくなるにつれて、大きくなることがわかった。この結果は、準位のエネルギーが大きいと、緩和時間が短くなることを示唆している。また、Coナノ構造をNiで囲んだ場合の実験に成功し、エネルギー半値幅やその準位エネルギー依存性が、Co単体の場合と比べてどのように変化したか、現在データ解析を行っている。エネルギー半値幅が大きく変化する場合、異種材料界面での電子散乱に関する知見が得られ、また緩和時間の制御につながることが期待される。 非弾性トンネル分光(IETS)によりフェルミレベル近傍でスピン反転を伴うスピン緩和を捉えようと、Coナノ構造上でIETS測定を行った。Coナノ構造の表面状態は上記のように量子化されているため、フェルミレベル近傍の電子状態はCoナノ構造の大きさに強く依存する。そこで、さまざまな大きさのCoナノ構造を用いて実験を行った。しかし、スピン反転を示唆する結果は得られなかった。そこで、スピン反転を誘起することが期待される強磁性体材料でCoナノ構造を囲み、引き続き同様の実験を進めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
強磁性ナノ構造における量子化された表面状態の緩和時間について、実験的な知見が得られ、さらに強磁性ナノ構造を他の材料で囲んだ際の結果も得られ始めているため。
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Strategy for Future Research Activity |
(1)時間分解スピン偏極STMによるスピン緩和時間測定 本研究で開発した時間分解スピン偏極STMを用いて、強磁性Coナノ構造の量子化されたスピン偏極準位のスピン緩和時間を測定する。また、強磁性Coナノ構造内におけるスピン緩和時間の場所依存性について明らかにする。 (2)スピン分解バンド分散測定によるスピン緩和時間の導出 スピン偏極STMによるバンド分散測定から、強磁性Coナノ構造の量子化されたスピン偏極準位のエネルギー幅を求め、スピン緩和時間を導出する。さらに、強磁性Coナノ構造を他の材料(NiまたはFe)で囲み、バンド分散測定から上記エネルギー幅の変化を明らかにし、スピン緩和時間への影響を議論する。これらの結果から、スピン緩和時間の制御について検討する。また、上記(1)との比較から、測定手法の違いによる緩和時間の違いについて検討する。 (3)非弾性トンネル分光(IETS)測定によるマグノン励起の検出 フェルミレベル近傍でのスピンフリップを伴うスピン緩和現象を明らかにするために、IETS測定によるマグノン励起の検出を試みる。特に、Coナノ構造をNiまたはFeなどの強磁性材料で囲んだ場合に注力する。
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Research Products
(5 results)