2017 Fiscal Year Annual Research Report
光援用ナノプローブによる多元系半導体太陽電池中の光励起キャリアダイナミクスの解明
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17H02783
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
高橋 琢二 東京大学, 生産技術研究所, 教授 (20222086)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | ナノプローブ / 太陽電池 / 光励起キャリア |
Outline of Annual Research Achievements |
光援用ケルビン・プローブ・フォース顕微鏡(P-KFM)を利用して、Cu(In,Ga)Se2[以下、CIGSと記す]太陽電池における局所的な光起電力の計測を行った。通常、太陽電池に使用されるCIGSは、内部の組成分布によってV字型に傾斜した伝導帯構造を持ち、それに伴ってバンドギャップも変化すると言われている。そこで、本研究では、特に、照射光の波長を変えることによって、光励起キャリアが生成される空間位置と計測される光起電力との関係を調べ、また、その結果を簡単なシミュレーションと対比させることで、光励起キャリアの試料内移動現象についての解析を行った。また、断続光照射下でのP-KFMにおいて、計測される時間平均光起電力と照射光波長や強度との関連性を詳細に調べ、光励起キャリアの再結合プロセスについての理解を深めた。 一方、通常のCIGS太陽電池では、CIGS膜の上にCdS膜のようなバッファ層を形成することが多いが、そのようなCdSバッファ層の有無による光励起キャリアの非発光再結合強度の差違を光熱分光AFM(PT-AFM)によって観測し、CdS膜の堆積時にCdがCIGS中に拡散してドナー準位を形成する可能性があることを明らかにした。 また、光照射による表面空乏層容量の変化を捉える光容量AFM(PCap-AFM)については、特に、交流バイアス誘起の探針-試料間静電引力に含まれる逓倍周波数成分の選択的抽出手法の新規構築に取り組んだ。これまでに、基礎的な検証実験を行い、例えば、交流バイアスの3倍周波数をカンチレバーの2次共振周波数と同調させることによって、測定のS/N比を向上できることを明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当該年度途中に、励起光源として使用していたチタンサファイアレーザ装置が故障するといった不測の事態に見舞われたために、4ヶ月間ほどの繰越期間が生じたものの、それ以外は、概ね、順調に研究は進んでいると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
当初の計画通り、P-KFM/PT-AFM/PCap-AFM等の各手法を駆使して、CIGSなどの多元系半導体太陽電池における光励起キャリアの試料内部移動や再結合などのダイナミクスの解明を目指す。現段階では、計画の大幅な変更などの予定はない。
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