2017 Fiscal Year Annual Research Report
High efficiency STEM phase imaging using two dimensional detector
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17H02784
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Research Institution | Tokyo University of Agriculture and Technology |
Principal Investigator |
箕田 弘喜 東京農工大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (20240757)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 透過電子顕微鏡 / 位相回復 / 位相板 |
Outline of Annual Research Achievements |
CCDカメラを使用して各電子線入射位置での出射電子強度の2次元検出を行うためには、電子顕微鏡のプローブ走査とCCDによる像取得の同期をとる必要がある。それを実現するために、CCDカメラシステムに同期して走査電子線ビームの制御を行える装置を導入した。 ビーム走査のための2段偏向コイルのコイルバランスを調整し、プローブ走査と2次元検出を同期させた動作を確認した。位相板を設置した状態で試料に対してプローブ走査を行えば、位相板の影が検出面に投影される。現状では、穴径1umに対して0.5mm程度のサイズの穴が観察できるので、CCDカメラで位置のズレが無いように調整する。 2次元検出器における強度分布を利用して試料ポテンシャルの正確な位相分布と振幅分布を演算により求める。使用するCCDカメラは2k×2kであるが、まずは、ビニングにより128×128ピクセル程度の入射プローブ位置でのテスト計測を行う。全検出範囲が、位相板の穴径の125%程度、200%程度になるようにカメラ長で設定し、テスト実験を行う。まずは、穴径の内のみの信号を取り出して像を作り、検出器絞りを利用して結像した場合と比較を進めた。 位相板の穴の内側と外側を別々に計測して像再生すると、球面収差の影響で内側からは低空間周波数の位相情報、外側からは高空間周波数の位相情報が得られる。ただし、穴径の外側で検出された信号は、検出器の中心部分からの信号は無いので、TEM法でホロ―コーン照明の条件で得られる明視野TEM像と同等の情報を有している。この点を考慮した演算処理を中心に計測方法の検討を進めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
実験遂行の過程で、現在使用しているCCDカメラは想定よりも検出効率が低いため、想定の範囲の露光時間の条件で、像検出をすることが出来なかった。そこで、露光時間とCCDカメラへ電子の信号を導入するためのカメラ長の条件、ビーム照射強度の条件について検討し、試料破壊の起こらない条件で、入射電子強度と検出される電子のS/Nを調整する実験を行う必要が生じた。 カメラ長については、既存の装置で準備されているカメラ長の条件では、計画していた条件で適切な強度、および適切な解像度の像取得ができないことが分かったので、既存の装置で準備されていなかったカメラ長の条件をフリーレンズコントロールの条件で、マニュアル的にレンズの磁場強度を調整することで準備して、実験を進めることも行った。 今年度導入したシステムによる方法と、従来の像取得方法で取得した像を比べ、概ね同様な像を得ることができることを確認した。現在、演算方法については検討を進めている。 想定外の問題が出てきたが、今後、検出条件を詳細に検討するためには必要になると思われる検討項目であったので、H29年度に適切な光学条件を実現するカメラ長の検討を系統的に進めたことで、検出方法を検討するのに適切な条件が探しやすくなったと言える。その意味では、研究の進捗はおおむね順調である。
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Strategy for Future Research Activity |
前年度に引き続き、位相板を用いた際のCCD2次元検出器を利用した位相回復についての演算方法の検討を行う。位相板の穴の内側と外側を別々に計測して像再生すると、球面収差の影響で内側からは低空間周波数の位相情報、外側からは高空間周波数の位相情報が得られる。ただし、穴径の外側で検出された信号は、検出器の中心部分からの信号は無いので、透過電子顕微鏡(TEM)法でホロ―コーン照明の条件で得られる明視野TEM像と同等の情報を有している。この点を考慮した演算処理により、位相回復を実現する。 2次元計測器を利用した電子強度検出については、現状の計測システムを使用した場合、当初の想定以上に強度の検出が難しいことが判明した。そのため、カメラ長と露光時間を変えて、強度検出をするための最適な条件の検討を進めている。この結果を踏まえて、位相計測法の検討を行う。 さらに、今年度は、位相板の厚みを変えた場合の計算について検討する。位相板はπ/2の厚み相当であれば、sin-関数部分とcos-関数部分の分離が完全であるが、位相差法の光学条件により得られる低周波領域の情報については、位相板による散乱によって欠損(強度の低下)がある。位相板の厚みを薄くすることで、2つの三角関数の重みつきの和になる、情報欠損の程度が小さくなるので、空間周波数の低い領域の位相情報のS/Nが向上する。厚みを替えた結果の比較によって、本手法で使用する位相板の適切な厚みを選ぶことができる。
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