2018 Fiscal Year Annual Research Report
Nanoscale evaluation of all-solid-state battery reactions by operando transmission electron microscopy
Project/Area Number |
17H02792
|
Research Institution | Japan Fine Ceramics Center |
Principal Investigator |
山本 和生 一般財団法人ファインセラミックスセンター, その他部局等, 主任研究員 (80466292)
|
Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
|
Keywords | リチウムイオン電池 / 電子線ホログラフィー / 電子エネルギー損失分光法 / オペランド計測 / 電子顕微鏡 / 固体イオニクス / 空間電荷層 |
Outline of Annual Research Achievements |
成果①:金属電極とイオン伝導性固体電解質が接触するナノ界面では,半導体と同様にバンド構造の湾曲が起こり,その界面でLiイオンまたはLi空孔が滞留することによって「イオンの空間電荷層」が形成されることが予想されていた.しかし,その様子を直接的に捉えた研究は皆無であった.そこで,高感度高分解能電子線ホログラフィーと位置分解電子エネルギー損失分光法(EELS)および前年度開発した電場シールドTEM試料作製技術を用いて,空間電荷層による電位分布とLi濃度分布を世界で初めて観察することに成功した.界面近傍の約10 nmの領域で1.3 Vの急峻な電位変化があることがわかり,Li濃度も増加していることがわかった.つまり,Cu/LATPの界面では,半導体のショットキー接合のようなバンド構造になり,Liイオンが滞留する空間電荷層を形成していることが明らかとなった(Angew. Chem. Int. Ed. に掲載)
成果②:走査透過型電子顕微鏡を用いたEELS分析は,2次元Li分布を観察できる唯一の技術である.しかし,LiCoO2内にあるLi-KのスペクトルとCo-Mのスペクトルが,ほぼ同じエネルギー損失値(60 eV)にピークを持つため,その分離が困難であった.そこで,多変量解析技術をEELS解析に適用し,2つのEELSピークを効果的に分離した.その結果,LiCoO2正極/LATP/その場形成負極の電池系において,充放電中におけるLiCoO2内のLi挿入/脱離反応を定量的に可視化することに成功した.また,遷移元素であるCoが,Liの脱離によってCo3+からCo4+になり,その2次元分布も観察できた.さらに,LiCoO2/LATPの界面ではLiが欠乏し,Co3O4が混在していることもわかり,これがイオン移動の抵抗を増大させている原因であることを突き止めた(Nano Lett. に掲載).
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
平成30年度の課題は,全固体電池を電子顕微鏡内で充放電させ,Li分布や遷移元素の価数変化などをナノスケールでオペランド観察し,イオン移動の界面抵抗の原因を突き止めることであった。 研究実績の概要で示したように,LiCoO2/LATP固体電解質/その場形成負極の全固体電池を,走査透過型電子顕微鏡(STEM)内で充放電させ,STEM-EELSを用いて2次元Li濃度分布,遷移元素であるCoの価数変化の分布をオペランド観察することに世界で初めて成功した.また,LiCoO2/LATP界面ではLiが欠乏し,Co3O4が混在していることもわかり,これが界面抵抗の原因であることを明らかにした.上記の研究成果を,権威ある学術雑誌「Nano Letters」に掲載でき,平成30年度の課題を完遂した. 上記に加えて,前年度開発した電場シールドTEM試料作製技術を駆使し,Cu電極/LATP固体電解質のナノ界面に形成されるイオンの空間電荷層を世界初で観察することに成功し,固体イオニクス分野にインパクトのある研究成果を得た.この結果は,応用化学分野で権威ある学術雑誌「Angewandte Chemie International Edition」に掲載された. さらに,オペランド電子線ホログラフィーを用いて,LiCoO2/LATP界面近傍200nmの領域で電位分布が低下する現象を計測できた. 以上の研究成果から,「当初の計画以上に進展している」と判断した.
|
Strategy for Future Research Activity |
平成31年度は,LiCoO2/LATP固体電解質/その場形成負極の全固体電池に対して,オペランド電子線ホログラフィーを行い,界面における電位分布の変化を充放電中に捉えることを計画している.現時点において,界面近傍200 nmの領域で,低い電位分布が観察できているため,その再現性や原因を突き止める追加実験を行う.具体的には,電子エネルギー損失分光法によるLi分布の直接観察や,イオンビームを用いた電荷分布計測を考えている. また,LiCoO2/LATP固体電解質界面にNbOなどの界面修飾層を入れた全固体電池を作製し,まずは,その充放電特性を調べる.特性の良い試料と悪い試料について,オペランド観察を行い,その違いを計測する.これによって,界面抵抗の違いによる局所的なLi分布や電位分布を議論でき,固体イオニクス分野へ非常に大きなインパクトを与える研究成果が得られると考えている. さらに,イオンの動きをこれまで以上に動的に捉える基礎技術の開発にも着手する.現在行っているオペランド計測に必要な撮影時間は,Liイオンが移動する時間よりも相当長いため,イオンの動きをより動的に捉えるには,撮影時間を短縮させる必要がある.そのため,電子エネルギー損失分光法や電子線ホログラフィーに,AI的高度画像解析技術を適用することを考えている.このアイデアは,当初,本研究計画には無かったが,近年,発展してきた画像解析技術をいち早く取り入れ,本研究のメインであるオペランド計測を一段階発展させたいと考えている.概算では,これまでよりも10倍以上速く撮影できる可能性があり,より動的なイオンの動きや電位分布の変化を追うことができる.
|
Research Products
(13 results)