2017 Fiscal Year Annual Research Report
All optical measurement of attosecond pulses and laser plasma dynamics using liquid-sheet jets
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17H02802
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Research Institution | National Institutes for Quantum and Radiological Science and Technology |
Principal Investigator |
板倉 隆二 国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構, 関西光科学研究所 光量子科学研究部, グループリーダー(定常) (80334241)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | アト秒物理 / 液膜ジェット / レーザープラズマ / 反射分光 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成29年度の実績は以下の4つにまとめられる。 1. レーザープラズマの空間分布;フェムト秒レーザーパルスを集光照射され、アブレーションに至る透明材料(石英、有機透明材料)を真空紫外パルス(160 nm, sub-20 fs)の時間分解反射スペクトルの解析を行った。シングルショットスペクトル計測において波長軸と直交した方向の空間分布に着目し、電子励起から空間膨張に至る時空間ダイナミクスについて議論することができた。また、真空紫外パルス波形は空間位置に依存しないことも明らかとなった。この成果は、国際会議等で発表した。 2. 短波長領域への拡張:固体ターゲットではあるが、光学系に含まれる真空紫外反射用誘電体多層膜ミラーを交換し、プローブ波長を160 nm から 132 nm へと短波長領域へ拡張することに成功した。この波長でも、周波数分解光ゲート(FROG)解析 により 20 fs 以下のパルス幅の計測に成功した。 3. 液膜ジェット発生装置の構築と液膜用チャンバーの設計と製作:送液ポンプと液膜発生用ノズルを組み合わせ、良好な液膜を発生できることを確認した。また、この液膜発生ノズルを収納するためのチャンバーを設計・製作した。 4. 光源開発:ドライバーレーザーとしての光パラメトリックチャープパルス増幅(OPCPA)の開発を行った。Yb: YAG 薄ディスク再生増幅器の基本波 (波長: 1.04μm)をポンプレーザーとし、 中心波長 1.4 μm、スペクトル幅 100 nm 以上の広帯域増幅に成功した。また、チタンサファイアレーザーおよび Yb:YAG レーザー用の反射型の空間光位相変調器(LCOS: Liquid Crystal on Silicon)を用いた4f 型波形整形器を設計し、光の振幅と位相の両方を自在に操作できるLCOS の制御プログラムを作成した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
予期していなかった課題も出たが、対応策を施し、以下に示すように順調に進んでいる。 1. レーザープラズマの空間依存性の有無を明らかとしたが、これまで使用していた瀬谷波岡型の分光器により測定された2次元イメージから空間分布の定量的な解析は難しく、薄膜フィルターや多層膜ミラーを用いたイメージ計測する方向性を決定した。 2. プローブのさらなる短波長化のため、穴あきミラーを用いたデレイラインを構築することになるが、回折効果を取り込んだビーム伝送の解析プログラムを作成した。空間的に切り出されるポンプおよびプローブビームのビーム形状の解析、ターゲットまでのビーム伝送の見積・評価、そしてターゲットの反射面における位相の解析が可能となる。また、20 nm 付近まで短波長領域まで測定可能なイメージング型分光器の設計も進めている。 3. 良好な液膜ジェットの発生が、目視で確認された。紫外領域のイメージング型分光器の制御・画像取り込みソフトの構築を終えた。また、液膜の真空中における回収・循環系については、蒸発を厳密に防ぐ仕組みが必要なことがわかった。液膜装置設置チャンバーを窒素や希ガスなどの不活性ガスでパージできるよう、拡張性を高めた。 4. レーザー光源については、広帯域のパラメトリック増幅が出来ることが実証され、自己相関計測もでき、コヒーレントパルスが増幅されていることは確認されたが、見積られたパルス幅は、フーリエ限界幅に比べて、改善の余地がある。また、OPCPA の他の光源として、チタンサファイア増幅器や Yb:ファイバーレーザーについても、波形整形器を導入し、広帯域化や高次分散補償を行い、短パルス化を進めている。さらに、反射型FROG と比較するための波形計測法として、第3高調波FROG の計測系も構築し、スペクトルグラムの計測試験が完了している。
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Strategy for Future Research Activity |
1. 液膜ジェットが光学鏡面としての面精度を持ち、1kHz の繰り返しでパルスごとにフレッシュな液膜面が露出し、高繰り返しのレーザープラズマミラーとして動作可能であると実証することを最重要項目と位置づける。すでに構築できている液膜上にチタンサファイアレーザーの基本波をポンプパルスとして水の液膜ジェット表面上にプラズマを生成し、BBO結晶で発生させた2倍波をプローブパルスとして時間分解反射スペクトルを測定する。得られたスペクトルグラムにプラズマミラーFROGによりパルス波形の抽出を行うとともに、別の独立した手法である第3高調波FROG などパルス波形計測の結果と比較し、測定法の有効性を検証する。 2. 真空紫外ビームラインについては、窒素もしくはアルゴンをパージしたチャンバー内で試料液体循環系を構築し、液膜ジェットを生成させる。チャンバー内で液膜ジェットおよび高調波、ポンプパルスをリモート制御するためのシステムを構築する。チャンバー内で液体が露出する部分を最小限に抑えた真空中の回収・循環系の設計は、その次の段階として進める。 3. 波長100 nm 以下の高次高調波発生ビームラインの整備を行う。穴あきミラーを用いたポンプ・プローブデレイラインと、極端紫外領域のスペクトルをシングルショット計測できる分光器を構築する。通常の分光器との違いは、真空度の悪い液膜ターゲットチャンバーと高真空が必要とされる検出器の接続にあたり、効率よい差動排気系を組むことにある。 4. OPCPA の高出力化に向け、非線形結晶等の伝搬シミュレーションコードを開発する。Yb:YAG薄ディスクレーザーの出力をノンドープのYAG結晶に集光することによって得た広帯域シード光に対して位相制御を行い、OPCPA 過程におけるポンプパルスとシグナルパルスの重なりが最大となるようにし、OPCPA の高出力化を目指す。
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