2018 Fiscal Year Annual Research Report
高機能・多機能材料表面を実現する革新的プラズマプロセス技術の開発とその応用
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17H02804
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Research Institution | Shizuoka University |
Principal Investigator |
永津 雅章 静岡大学, 電子工学研究所, 特任教授 (20155948)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
荻野 明久 静岡大学, 工学部, 准教授 (90377721)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | プラズマプロセス |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、従来困難とされたフッ素系材料の表面修飾技術および異種材料との接合技術、3次元半導体デバイスに必要とされるSi基板の接合技術、さらに医療・環境分野において注目されるナノ微粒子表面処理技術など、高機能・多機能表面処理を実現する革新的プラズマプロセス技術の開発を目的としている。平成30年度の主な研究成果は以下の通りである。 1.大面積材料表面処理用プラズマ源の開発を目的として、予備電離方式を有する長尺大面積誘電体バリア放電装置の開発を行い、放電特性を明らかにした。また、それらを用いたフッ素系樹脂表面のカルボキシル基修飾を行い、親水性の向上および異種材料との接着性が改善されることを確認した。 2.直流アーク放電を用いた表面プラズモン特性および触媒特性を有する多機能アミノ基修飾銅ナノ微粒子の合成を行い、液中銅イオンの選択的・高感度検出、および有機廃液中の有機色素の高速分解特性を有することを明らかにした。 3.直流アーク放電法により作製したアミノ基修飾磁気ナノ微粒子を用いたロタウイルスの高効率回収法に関する実験の結果、磁気回収により約8倍にウイルス濃度の高濃度化が可能であり、さらに他のウイルスと混在したサンプルからの選択的捕集が可能であることを明らかにした。 4.RFマグネトロンスパッタリングにより作製したZnO薄膜のAr/NH3混合ガス表面波プラズマによる表面処理後のXPS解析、フォトルミネセンスの蛍光測定、アミノ基数の定量解析の結果から、NH3ガス混合比が約30%においてZnO薄膜の結晶性が改善され、さらに蛍光強度およびアミノ基表面修飾量が最大となることを明らかにした。 5.上記の研究成果は、査読付き英文学術論文に5編、国内学協会誌に4編、国際会議および国内学会に9件発表を行った。また、大面積表面処理用の大気圧誘電体バリア放電プラズマ生成装置に関する特許を1件国内出願した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の主な研究項目として挙げた研究テーマのうち、フッ素系材料のプラズマ表面修飾技術およびフッ素樹脂材と金属などの異種材料間の接合技術の開発に関する研究については、当初の予定通り、ほぼ順調に良好な成果が得られた。また新たな大面積大気圧誘電体バリア放電装置の開発および特許出願を行うとともに、フッ素樹脂表面へのアミノ基修飾が可能であることを明らかにし。学術論文誌Journal of Photopolymer Science and Technologyに発表を行った。さらに、表面プラズモン特性および触媒特性を有する多機能アミノ基修飾銅ナノ微粒子の合成技術とその応用に関する研究では、液中の低濃度の銅イオンを高感度で選択的に検出、および有機廃液からの高効率有機物分解が可能であることを明らかにし、学術論文誌Advanced Materials Interfacesに発表を行った。また、直流アーク放電により作製したアミノ基修飾磁気ナノ微粒子を用いたロタウイルスの高感度検出に関する研究では、低濃度ロタウイルスの高感度検出および捕集したウイルスの高効率増殖が可能であることを明らかにし、International Journal of Nanomedicine誌に発表を行った。最後に、バイオ蛍光材料として注目されるZnO薄膜のAr/NH3表面波プラズマによる表面処理の実験では、RFマグネトロンスパッタリング作製後およびプラズマ処理後のZnO表面のXPS解析およびフォトルミネセンス蛍光特性の測定の結果、NH3ガス混合比が約30%において、結晶性、蛍光特性およびアミノ基表面修飾が最大になることを示し、プラズマ表面処理の有用性を確認した。これらの結果はLangmuir誌に発表している。以上のように、当初の研究計画を概ね順調に達成することができており、上記の判定を行うに至った。
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Strategy for Future Research Activity |
平成31年度では、平成30年度に実施した実験項目を継続して行うとともに最終年度としての研究成果の総括を行う。本研究の目的として掲げた上記4項目のうち、1)フッ素系高分子材料のプラズマ表面修飾技術、2)フッ素樹脂とアルミ等の異種材料間の接着技術、および4) 医療・環境分野において注目される新規ナノ微粒子の合成技術に関しては、概ね当初の研究目標を達成する成果をあげることができた。最終年度では、残された3) 3 次元半導体デバイス開発に必要とされるSi基板の接合技術に関する研究項目を重点的に実施するとともに、項目1)、および2)についても継続し、さらに高度な研究成果の達成を目指して研究を実施していく計画である。以下に、平成31年度に実施する実験項目は以下の通りである。 (1) 大気圧プラズマを用いたフッ素樹脂材(PTFE, ETFE等)の表面修飾技術:前年度までの研究をさらに進めるとともに、平成30年度に開発した長尺大面積大気圧放電プラズマを用いて、難接着材のフッ素樹脂材の高効率表面修飾を実現し、異種材料との接着性のさらなる向上を目指す。 (2) プラズマ表面修飾によるシリコン基板の低温接合技術:シリコン基板の大気圧下でのプラズマ表面修飾に関する研究を推進し、シリコン基板へのOH基修飾および異種半導体材料との接合技術の開発を行う。 (3) アルミ基板表面のプラズマ表面修飾による樹脂などの異種材料との接着技術:大気圧プラズマ表面修飾によるアルミ基板表面への官能基修飾の高密度化を実現するとともに、アルミ基板とフッ素樹脂材などの異種材料との接合技術の開発を行う計画である。 (4) 研究成果の発表:研究期間に得られた成果を、国際的に評価の高い学術論文あるいは主要な国内学会や国際会議で発表を行う。 また、成果に応じて特許出願等を行っていく予定である。
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