2018 Fiscal Year Annual Research Report
酸素プラズマによる植物機能のエピジェネティックな発現および遺伝機構の解明
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17H02806
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
林 信哉 九州大学, 総合理工学研究院, 教授 (40295019)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 植物成長促進 / 酸素プラズマ / エピジェネティクス / 遺伝子発現 |
Outline of Annual Research Achievements |
プラズマ照射種子から成長した植物の細胞では遺伝子発現の際にエピジェネティクスが生じる場合があるが,このときのプラズマ条件の特定を試み,電子密度が10^12-13 /m^3程度,電子温度が2eV以下,プラズマ照射時間が60分程度の場合に遺伝子発現がエピジェネティクスが効率的に生じることが分かった.これら以外のパラーメータでは植物の成長促進がほぼ生じないことから,酸素プラズマによる植物成長促進はエピジェネティックな遺伝子発現により誘導されると推察される.このとき,マイクロアレイを用いた遺伝子発現網羅的解析によりAT2G,DME,Jmjc等のエピジェネティクスを誘導する遺伝子群が優位に発現しており,5メチルシトシンの生成量が増加していることからDNAメチル化が生じていることが明らかとなった.また,エクスパンシンやシャペロン等の遺伝子も発現することから,細胞伸長や遺伝子修復によって植物の成長が促進すると考えられる. 上述のような,エピジェネティクス的な発現を伴う各遺伝子が発現するプラズマのパラメータ(電子密度,電子温度,照射時間)の領域を実験よって見出し,プラズマ照射遺伝子発現マップを作成した.本マップを用いることで,植物の栽培,成長を待たずにプラズマによる成長促進効果がより精密に予測でき,本分野の研究者だけでなくプラズマを農業に応用する生産者等にとっても大きく貢献すると考えられる. 本年度は次年度に行う予定のエピジェネティクス関連遺伝子群の発現量の定量化に対して,定量化する遺伝子の種類,リアルタイムRT-PCR法を用いる際のプライマーの選択・設計を行った.また最適なハウスキーピング遺伝子も特定した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
これまで本研究では,研究計画調書に沿って以下の1~7に関する研究を行い,所定の結果を得てきた. 1. エピジェネが生じるプラズマの特定,2. エピジェネおよび遺伝子シーケンス解析,3. プラズマ照射遺伝子発現マップの作成,4. エピジェネを誘導する活性酸素種の生成,5. 粒子種依存遺伝子発現および植物成長特性,6. エピジェネおよび遺伝子シーケンス追加解析, 7. プラズマ照射遺伝子発現マップの追加作成 従って,本研究は順調に進展していると判断される.
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Strategy for Future Research Activity |
1. プラズマ照射効果とエピジェネティックな遺伝子発現との定量的な相関性の確認 これまではマイクロアレイ解析による網羅的な遺伝子発現変動解析により,プラズマ照射により特発現量が変動するエピジェネティクス関連遺伝子を特定した.本年度はリアルタイムPCRを用いてエピジェネティクス関連遺伝子の発現量を定量的に調べ,プラズマが遺伝子発現を制御するメカニズムを明らかにする. 2. プラズマ照射からエピジェネティクスへ至るパスウェイの解明 酸素プラズマを照射した植物種子遺伝子の発現量計測より,植物種子への酸素プラズマ照射からエピジェネティクスへ至るパスウェイを同定し,プラズマ照射効果の発現および次世代への継承メカニズムの解明を行う.
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