2017 Fiscal Year Annual Research Report
Development of a brightness enhancement method of a positron beam for generating high density positroniums
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17H02820
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Research Institution | National Institute of Advanced Industrial Science and Technology |
Principal Investigator |
大島 永康 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 計量標準総合センター, 研究グループ長 (00391889)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
ORourke Brian 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 計量標準総合センター, 主任研究員 (60586551)
満汐 孝治 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 計量標準総合センター, 研究員 (10710840)
石田 明 東京大学, 大学院理学系研究科(理学部), 助教 (00647670)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 高密度陽電子バンチ / 高輝度陽電子ビーム / 高密度ポジトロニウム / ボース・アインシュタイン凝縮(BEC) / 高効率ポジトロニウム生成・閉じ込め材料 |
Outline of Annual Research Achievements |
電子と陽電子の束縛系であるポジトロニウム(Ps)のボース・アインシュタイン凝縮(BEC)は、反物質に働く重力の精密測定や消滅ガンマ線レーザー発生に道を拓く興味深い系であるが、未だに実現されていない。本研究の目的は、Ps-BEC 実現で最大の障害となっている超高密度Psの生成技術を開発することである。具体的には、(a)超高輝度陽電子バンチを形成し、(b)Ps生成ターゲット部に入射し、超高密度Ps生成を目指す。本年度は、(a)(b)それぞれの要素技術開発で以下の進展があった。 (a) 陽電子蓄積装置から得る陽電子バンチビームの高輝度化・高密度化法を検討した。蓄積装置から、陽電子1E8個から成るバンチビームを時間幅50nsで引き出すことを想定し、ビーム径方程式による軌道数値計算を行った結果、磁気レンズと再減速材から成る輝度増強装置2段と対物レンズ用超伝導ソレノイドコイル1段とを組み合わせることで、目標密度の陽電子バンチを形成できることが分った。 (b) 超高密度Ps生成に適したPs生成・閉じ込めターゲットとして、微細加工を行った機能性シリカガラス・石英基板上に生成した多孔質シリカ薄膜の2材料を並行して開発した。前者では新規材料である可塑性SiO2/PVA重合体にシリコンモールドをプレスし、ナノインプリントによって微細穴加工した材料を作成した。適切な表面研磨法を確立する必要があった。一方後者は伝統的なゾル-ゲル法によって多孔質シリカを石英基板上に成膜した。両者ともにKEKのSPF(低速陽電子施設)においてビームテストを行った。一部データは現在も解析中であるが、高効率Ps生成・閉じ込めターゲットについて知見が蓄積された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
電磁場解析や陽電子ビーム軌道計算による定量的検討を重ね、高密度ポジトロニウム生成スキームの概要を決定した。陽電子バンチビームの輝度増強装置は、空間電荷効果が問題にならない条件で開発できることを、軌道計算により示すことができた。輝度増強装置の具体的な仕様が求まったことで、設計指針を明確にすることができた。 陽電子バンチビームを輝度増強装置を通してマイクロビーム化してPs生成材料に照射した際の試料チャージアップ効果については、次年度でモンテカルロ法計算を用いて評価する。 超高密度Ps生成に適したPs生成・閉じ込めターゲットとして、①微細穴加工した新規機能性シリカガラス材料、②ゾル-ゲル法により石英基板上に成膜した多孔質シリカ薄膜、に着目し計画通りに試作した。①の開発では表面研磨が結果に大きく影響することが新たに判明したが、研磨法を確立することで試作品を完成させられた。試作した試料のPs生成効率の材料温度及び陽電子ビーム照射エネルギー依存性について、東大の陽電子寿命測定装置、産総研とKEKの低速陽電子施設を用いて測定を行い、超高密度Ps生成・閉じ込め材料の知見が蓄積された。 低速陽電子施設における測定において、表面放出Psの効果が大きく、より詳細な知見を得るには表面放出Psの放出率やエネルギー分布を測定しなければならないという課題が新たに見つかったが、次年度で研究する。
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Strategy for Future Research Activity |
陽電子バンチ高密度化スキームを実現するためのビーム光学系の詳細設計を2018年度中に行う。特に、再減速材からの高密度バンチビームの引き出し法、2段の輝度増強部の接続部の最適化、および高密度バンチビームをターゲットに照射した際のチャージアップ効果が引き起こす材料中の陽電子拡散について、数値シミュレーションを用いて評価する。 また2018年度中に、表面放出Psの放出率及びエネルギー分布測定をKEKの低速陽電子施設において完了する。その情報を2017年度のビームテストの結果に適用してデータを詳細に解析し、試作したPs生成・閉じ込めターゲットが期待通りの性能であるかどうかを検証する。Ps-BECを達成するためにはPs生成・閉じ込めターゲットは低温 (10 K以下) かつ紫外線 (波長 243 nm) 照射下でも高い性能を発揮しなければならない。そのためにはターゲットを焼鈍する必要があるため、まずは焼鈍したターゲットの性質を低速陽電子施設にて測定する。並行して2018年度中に低温装置や紫外線照射装置を開発し、低速陽電子施設に設置する。 2019年度に低温・紫外線照射下におけるPs生成・閉じ込めターゲットの性質を詳細に測定し、最終的にPs-BEC実現に用いるターゲットを完成させる。
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Research Products
(19 results)
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[Presentation] Recent progress in positronium experiments for Bose-Einstein condensation2018
Author(s)
A. Ishida, K. Shu, T. Murayoshi, T. Namba, S. Asai, E. Chae, K. Yoshioka , M. Kuwata-Gonokami, N. Oshima, B. E. O’Rourke, K. Michishio, K. Ito, K. Kumagai, R. Suzuki, S. Fujino, T. Hyodo, I. Mochizuki, K. Wada
Organizer
Low Energy Antiproton Physics Conference 2018 (LEAP 2018)
Int'l Joint Research / Invited
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[Presentation] ボース・アインシュタイン凝縮を目指したポジトロニウム冷却I2018
Author(s)
石田明, 周健治, 村吉諄之, 難波俊雄, 浅井祥仁, 蔡恩美, 吉岡孝高, 五神真, 大島永康, オロークブライアン, 満汐孝治, 伊藤賢志, 熊谷和博, 鈴木良一, 藤野茂, 兵頭俊夫, 望月出海, 和田健
Organizer
日本物理学会第73回年次大会(2018年)
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[Presentation] ボース・アインシュタイン凝縮を目指したポジトロニウム冷却II2018
Author(s)
周健治, 村吉諄之, 石田明, 難波俊雄, 浅井祥仁, 蔡恩美, 吉岡孝高, 五神真, 大島永康, オロークブライアン, 満汐孝治, 伊藤賢志, 熊谷和博, 鈴木良一, 藤野茂, 兵頭俊夫, 望月出海, 和田健
Organizer
日本物理学会第73回年次大会(2018年)
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[Presentation] ナノ空孔材料を利用した高密度・低温ポジトロニウムの生成2018
Author(s)
周健治, 村吉諄之, 石田明, 難波俊雄, 浅井祥仁, 蔡恩美, 吉岡孝高, 五神真, 大島永康, オロークブライアン, 満汐孝治, 伊藤賢志, 熊谷和博, 鈴木良一, 藤野茂, 兵頭俊夫, 望月出海, 和田健
Organizer
第1回産総研微細構造解析プラットフォーム設備利用講習会
Invited
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[Presentation] Study on positronium Bose-Einstein condensation2017
Author(s)
A. Ishida, K. Shu, T. Murayoshi, X. Fan, T. Namba, S. Asai, K. Yoshioka, M. Kuwata-Gonokami, N. Oshima, B. E. O’Rourke, R. Suzuki
Organizer
The 3rd China-Japan Joint Workshop on Positron Science (JWPS2017)
Int'l Joint Research / Invited
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[Presentation] Toward a Realization of Bose-Einstein Condensation of Positronium2017
Author(s)
K. Shu, X. Fan, T. Murayoshi, A. Ishida, T. Namba, S. Asai, K. Yoshioka, M. Kuwata-Gonokami, N. Oshima, B. E. O’Rourke, R. Suzuki
Organizer
2nd Jagiellonian Symposium on Fundamental and Applied Subatomic Physics
Int'l Joint Research / Invited
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[Presentation] ボース・アインシュタイン凝縮実現を目指したポジトロニウム冷却2017
Author(s)
石田明, 周健治, 村吉諄之, 難波俊雄, 浅井祥仁, 吉岡孝高, 五神真, 大島永康, オロークブライアン, 鈴木良一, 藤野茂
Organizer
京都大学原子炉実験所専門研究会「陽電子科学とその理工学への応用」
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[Presentation] ボース・アインシュタイン凝縮を目指したポジトロニウム冷却2017
Author(s)
周健治, 村吉諄之, 石田明, 周健治, 難波俊雄, 浅井祥仁, 吉岡孝高, 五神真, 大島永康, オローク・ブライアン, 鈴木良一, 藤野茂
Organizer
第60回放射線化学討論会
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[Presentation] ボース・アインシュタイン凝縮を目指したポジトロニウム冷却I2017
Author(s)
周健治, 村吉諄之, 石田明, 難波俊雄, 浅井祥仁, 吉岡孝高, 蔡恩美, 五神真, 大島永康, 満汐孝治, オローク・ブライアン, 鈴木良一, 藤野茂, 望月出海, 兵頭俊夫
Organizer
日本物理学会2017年秋季大会
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[Presentation] ボース・アインシュタイン凝縮を目指したポジトロニウム冷却2017
Author(s)
周健治, 村吉諄之, 樊 星, 石田 明, 難波 俊雄, 浅井祥仁, 吉岡孝高, 五神真, 大島永康, オローク・ブライアン, 鈴木良一, 藤野 茂
Organizer
第54回アイソトープ・放射線研究発表会
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