2018 Fiscal Year Annual Research Report
X線自由電子レーザー誘起スピン偏極状態の生成と超高速磁気ダイナミクスの研究
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17H02823
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Research Institution | Japan Synchrotron Radiation Research Institute |
Principal Investigator |
鈴木 基寛 公益財団法人高輝度光科学研究センター, 利用研究促進部門, 主幹研究員 (60443553)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
田中 義人 兵庫県立大学, 物質理学研究科, 教授 (80260222)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | X線自由電子レーザー / 磁気ダイナミクス / 超高速現象 |
Outline of Annual Research Achievements |
(1) X線励起スピン誘起現象の観測: X線自由電子レーザー施設SACLAの共同利用ビームタイムを取得し、H29年度に開発した偏光分離顕微光学系を用いたX線励起スピン偏極現象の観測を試みた。プローブレーザーとXFELとの照射位置の調整、およびフェムト秒の時間幅をもつ2つの光源のタイミング調整を完了し、ワンショットで磁区像を取得する測定系を構築した。ガドリニウム鉄ガーネット試料のガドリニウムL吸収端での、円偏光XFEL照射による可視光ファラデー回転角の変化を測定した。その結果、XFEL照射による超高速減磁過程とその緩和過程を示唆する信号が得られた。主要な観測結果として (1) XFEL照射直後400 fs 以内に生じるファラデー回転角の急激な減少、(2) (1)の現象につづいて起こるファラデー回転角の回復と8 psの周期でのファラデー回転角の振動、が観察された。これらはそれぞれ、(1)XFEL照射による超高速な減磁過程、および(2)磁化が回復する過程でのスピン波励起に対応すると推察される。 (2) ワンショットで可視光スペクトル観察を行うための分光光学系の開発: 実験室での広バンド幅レーザーを用いた性能試験と予備実験を行った。波長800 nmのチタンサファイア フェムト秒レーザーをAl2O3結晶に照射することで、非線形光学効果により可視-近赤外領域の白色レーザーパルスを得た。このレーザー光源に対してファイバー分光器によるスペクトル測定を行い、600 nmから1000 nmの波長域で実験に利用可能なスペクトル強度と安定性が得られることを確認した。2019年度には、この光源を用いてガドリニウム鉄ガーネット試料等のバンド間遷移のワンショット吸収分光測定を行う計画である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
H30年度に計画していた内容のうち、(1) X線励起スピン誘起現象の観測に関して、(1-1) 偏光分離顕微光学系によるワンショット磁気像の取得、(1-2)XFELを用いたX線励起スピン偏極現象の観測を行った。その結果、(1-3) ガドリニウム鉄ガーネット試料に対する、ガドリニウムL吸収端での円偏光XFEL照射による可視光ファラデー回転角の変化を観測した。この結果から、XFEL照射による超高速な磁化変化と緩和過程を示唆するデータが得られた。ただし、観測された現象がX線によるスピン誘起によるものかどうかは、注意深く検討する必要がある。 さらに、 (2) ワンショットで可視光スペクトル観察を行うための分光光学系の開発に関して、実験室での広バンド幅レーザーを用いた性能試験と予備実験を行った。これにより、ワンショットスペクトル測定に十分な性能を有する白色パルスレーザー光源および光学系の開発が完了した。
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Strategy for Future Research Activity |
2019年度には、偏光分離顕微光学系を用いてSACLAでのビームタイム実験を再度行い、X線誘起磁化現象の詳細な観測を行う。データの再現性を確認するとともに、XFELの照射パワー、偏光状態、X線エネルギー等の様々な条件下での測定を行う。また、X線励起から数10ピコ秒以上の時間領域で観測される磁化の振動波形を詳細に調査する。ワンショット分光光学系による価電子帯ダイナミクス計測に関して、XFELを用いた実験を行う。さらに、上記の実験で得られた結果を論文として投稿するとともに学会発表を行う。
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[Presentation] Three-Dimensional Observation of Magnetic Domain Structure Using Scanning Hard X-ray Microtomography2018
Author(s)
Motohiro Suzuki, Kab-Jin Kim, Sanghoon Kim, Hiroki Yoshikawa, Takayuki Tono, Kihiro T. Yamada, Takuya Taniguchi, Hayato Mizuno, Kento Oda, Mio Ishibashi, Yuushou Hirata, Tian Li, Arata Tsukamoto, Daichi Chiba, and Teruo Ono
Organizer
2018 Korean Physical Society Fall Meeting
Invited