2017 Fiscal Year Annual Research Report
強スケーリング性能を指向した計算物理向け超並列行列計算ライブラリの開発
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17H02828
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Research Institution | The University of Electro-Communications |
Principal Investigator |
山本 有作 電気通信大学, 大学院情報理工学研究科, 教授 (20362288)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
横川 三津夫 神戸大学, 先端融合研究環, 教授 (70358307)
星 健夫 鳥取大学, 工学研究科, 准教授 (80272384)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 行列計算 / 並列計算 / 強スケーリング / 計算物理 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は次の3つのテーマについて研究を行った。 (1) 時間依存シュレーディンガー方程式に基づく波束シミュレーション向けに,1-way dissection法に基づく帯行列用の並列版連立1次方程式直接解法を開発した。性能評価の結果,40万元の問題を解く場合に 10コアで7倍程度の加速が得られ,LAPACKに比べて高い性能を得られることを明らかにした。また,モデル問題として2次元ポアソン方程式を取り上げ,種々の疎行列格納方式を用いた場合の性能を評価した。今後,本ソルバを有機高分子系の時間発展シミュレーションに適用する。 (2) ブロックヤコビ法と並列動的オーダリングに基づく共有メモリ版の実対称固有値ソルバを開発するとともに,収束性に関する理論的・実験的解析を行った。理論解析では,非対角ノルムの1次収束性に関して新しい上界を導出した。新たな上界は並列数に反比例する形を持ち,並列化による加速を理論的に裏付ける結果となっている。また,従来のラウンドロビン法や修正型モジュラス法と並列動的オーダリングとを比較し,後者は行列が悪条件の場合に従来法と比べて反復回数を大きく削減できることを示した。 (3) 超並列型量子物質計算の応用研究として京コンピュータを用いた有機高分子の多数計算(1200原子,4万サンプル)を行い,データ科学的解析(主成分解析)により有機材料のデバイス性能が,2種の競合的要因で得られることを示した。これにより,受賞2件を受けた。また,超並列性に適した中間固有値問題計算ライブラリk-epを作成し,ネット公開を行った(https://github.com/lee-djl/k-ep)。さらに,自作ミドルウェア型超並列固有値ソルバEigenKernel(https://github.com/eigenkernel/)において,データ科学(ベイズ推定)を用いた性能予測手法を構築した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
連立1次方程式ソルバ,固有値ソルバとも,研究は順調に進展し,共有メモリ型並列計算機向けにソルバのプロトタイプが完成できた。また,固有値ソルバについては,並列性能を裏付ける理論的な結果も導出した。さらに,データ科学による物性研究という新しい領域における研究も推進し,次のように2件の賞を受賞している。
[1] 学生優秀発表賞:大平健太郎,星健夫,福島孝治,「データ科学と大規模電子状態計算による有機高分子探索」 第31回分子シミュレーション討論会(2017年11月29日-12月1日).
[2] HPCI利用研究平成28年度優秀成果賞(2年連続受賞)「100ナノ電子状態計算とデータ科学による有機デバイス材料研究」,第4回「京」を中核とするHPCIシステム利用研究課題 成果報告会(2017年11月2日, 東京).
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Strategy for Future Research Activity |
開発したソルバ群の分散メモリ型並列化を行い,より多くのコア数で並列性能を確認する。また,ソルバ群を電子状態計算から生じる行列に適用し,性能と精度を評価する。さらに,データ科学の物性予測への応用など,新しい方向についても研究を進める。
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