2018 Fiscal Year Annual Research Report
Towards the theory of Algbebraic Symplectic Geometry
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17H02833
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
並河 良典 京都大学, 理学研究科, 教授 (80228080)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | シンプレクティック特異点 / 双有理幾何 / ポアソン変形 / べき零軌道 |
Outline of Annual Research Achievements |
アファイン(特異点つき)シンプレクティック多様体で、正荷重の1次元代数トーラスの作用を持ったものを 錐的(conical)シンプレクティック多様体とよぶ. これらは, 幾何学的表現論に頻繁にあらわれる重要な対象である. 錐的シンプレクティック多様体の座標環から, 極大ウエイトと呼ばれる量が決まる. 次元と極大ウエイトを固定すると, 錐的シンプレクティック多様体は高々有限個しかない. これが本研究課題がスタートしたときにわかっていたことであった. その後, 極大ウエイトが 1 の場合に, 錐的シンプレクティック多様体を完全に分類することができた. よく知られたように, 半単純複素リー環のべき零軌道の閉包の正規化を考えると錐的シンプレクティック多様体になる. 特にべき零軌道の閉包が正規多様体ならば, べき零軌道閉包自身が錐的シンプレクティック多様体になる. 極大ウエイトが 1 の錐的シンプレクティック多様体は, こうした正規なべき零軌道閉包に他ならないというのが、その分類結果である. しかし, 正規でないべき零軌道閉包が実際に存在するので, この結果では不十分である. そこで, (正規とは限らない)べき零軌道閉包の有限被覆として得られる錐的シンプレクティック多様体の特徴付けに着手した. その結果, 座標環とシンプレクティック形式のウエイトを用いた特徴付けを与えることができた. この研究は, Brylinski-Kostantによる shared orbits の理論とも深い関係がある. またべき零軌道閉包の有限被覆に関する双有理幾何(Q-分解的端末化の具体的記述, クレパント特異点解消の存在等)に関しても、ごく最近、新しい進展があったので, 今後の研究で明らかにしていくつもりである.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
錐的シンプレクティック多様体のポアソン変形と双有理幾何の研究は, 幾何学的表現論の 研究、特にシンプレクティック双対性の研究で広く用いられている. なかでも、シンプレクティック特異点に付随したある種のワイル群はシンプレクティック双対性の重要なファクターであると考えられている. また, べき零軌道閉包の特徴付けは, Hanany をはじめとする超弦理論の研究者によって, クーロン枝を研究する際に多く用いられている. 正規なべき零軌道閉包を極大ウエイト1である錐的シンプレクティック多様体として特徴付けた研究は, 半単純リー環を幾何学的な視点で捉えなおした点で, 独創的で面白い観点を含んでいると考えている. さらにこの研究の発展形が, Bryklinski-Kostant の研究と関連する形で得ることができたことは当初の計画にはなかったことである. 錐的シンプレクティックの分類はもっとも単純な場合は, 非常に美しい形で達成されたが、これから先に進んでいくためには何か新しいアイデアを必要とするように思える.
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Strategy for Future Research Activity |
シンプレクティック代数幾何という分野を構築させ, 発展させるという方向の研究は、おぼろげながらではあるが、徐々に形を持ってきた. 目標の一つに掲げた, シンプレクティック特異点は常に錐的であるというKaledin予想に関しては、まだ十分に発展させていないアイデアがある. これらを研究期間中に発展させることが当面の目標である. シンプレクティック双対性を, 錐的シンプレクティックの分類とどう結びつけるかがその次の課題である. ごく最近, べき零軌道閉包の有限被覆の双有理幾何に関して, 新しい知見を得た. これによって少なくとも古典型のリー環に関しては, Q-分解的端末化, クレパント特異点解消の具体的な記述が可能になると考えられる.
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