2019 Fiscal Year Annual Research Report
3・4・5次元多様体上の葉層・接触・シンプレクティック構造の研究
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17H02845
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Research Institution | Chuo University |
Principal Investigator |
三松 佳彦 中央大学, 理工学部, 教授 (70190725)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
三好 重明 中央大学, 理工学部, 教授 (60166212)
高倉 樹 中央大学, 理工学部, 教授 (30268974)
直江 央寛 中央大学, 理工学部, 助教 (10823255)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | Anosov 流 / 葉層構造 / 接触構造 / シンプレクティック構造 / カスプ特異点 / Lefschetz fibration / シンプレクティック葉層構造 / Milnor fiber |
Outline of Annual Research Achievements |
2019年度内の研究成果 (1)国内の研究組織により、単純特異点とカスプ特異点の総ての場合に付随する Milnor fiber に Lefschetz fibration を構成することに成功した。(特に、項の最低次数が2の場合が困難であった。) (2)(1)の結果を応用し、Milnor fiber とK3曲面の(コ)ホモロジーの構造、および、Milnor fiber のモノドロミーが位相的に完全に理解された。 (3)Lefchetz fibration の構成に伴い、4次元から2次元への写像の孤立臨界点を2-jetの水準で Lefschetz 臨界点に変形可能かどうかの特徴付けを与えた。上の(1)の研究の一部を見通しよくするものであるが、それ以上に Lefschetz fibration の構成の一般論として、またそれ自身として有用かつ美しい結果が得られた。当初の研究計画からは予想していない方向の結果である。 2020年度へ繰り越した分の研究成果(国内外の研究組織のメンバーとはZoom等のオンラインによる討論により研究打合せを行った) (4)Melanie Bertelson 教授、Gael Meigniez 教授と 局所共形 symplectic 葉層構造の存在及び構成の問題に関して、自明S^1-束の場合の特殊例の族の構成を行った。 (5)上の(1)の成果により、特に重要な例が総て取り込まれたので、Milnor fiber ではなく、極小特異点解消に置き換えて得られるVII型の Hirzebruch-井上曲面として、これまでよりやや代数的に、代数幾何や数論的考察を加えることにより Lefschetz fibration のモノドロミーの連分数などの代数的なデータによる理解を得た。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
複素3変数の単純楕円特異点とカスプ特異点の総ての場合に、Milnor fibration の fiber に Lefschetz fibration の構造の存在を示すことができ、また、この応用として5次元球面上の余次元1シンプレクティック葉層の存在の新たな証明を与え、K3曲面のこれまで知られていなかった位相的分解を得ることができ、これらに数論的な側面からの理解を与えることができた。特異点を与える多項式の項のうち最低の次数が2であると困難が残っていたのであるが、これが克服され、Arnol’d が提唱した strange duality の第2世代に相当する特異点の duality の総ての場合をうまくカバーできた(実際、最低次数が2の場合の方が多い)。 また、これに関連して、4次元から2次元への写像の臨界点の2-jetが局所変形により Lefschetz 臨界点に改変できる条件が得られた。これらの成果は研究の大きな進展といえる。 一方、3次元接触構造のタイト性の証明については少しずつ進んでいるが、量子化の方向への研究がまだ進展していない。これは研究予定からやや遅れていると思われる点である。 前半に述べた成果はやはり大きなもので、これらを総合すると、おおむね順調に進展していると評価できる。
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Strategy for Future Research Activity |
Lefschetz fibration はもともとそれ自身が symplectic fibration となるような symplectic 構造を誘導するものとして考えられてきた。単純楕円特異点やカスプ特異点の Milnor fiber に我々が構成した Lefschetz fibration が誘導する symplectic 構造は、Milnor fiber が本来持っている複素構造とは両立せず、本来の複素構造と両立する symplectic 構造は大域的な凸性が強く、その凸性を破壊することが元々の動機であった。そこで、この元の複素構造を忘れるのではなく、逆にそれに対して Lagrangian (または総実) fibration として Lefschetz fibration を構成する方法論を探る。また、この方法論の適用範囲を位相的に特徴づけることが可能であるかを探る。これにより、K3曲面などの楕円曲面の hyper-Kaehler 構造の理解や、VII 型曲面との関連も飛躍的に進むことが期待される。 接触構造のタイト性の証明に、これまでの方法論に加えてカスプ特異点のリンクの構造を用いることにより進展が期待できる状況となった。 量子化の方向性の研究に、1-形式のトポロジーを導入する観点が有用であると思われ、この方向性で研究を進める。
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