2019 Fiscal Year Annual Research Report
不確定特異点を持つD-加群と幾何学的モノドロミーの研究
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17H02848
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
竹内 潔 筑波大学, 数理物質系, 教授 (70281160)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | D-加群 / 特異点理論 / 超幾何関数 |
Outline of Annual Research Achievements |
望月拓郎と Kedlaya の理論により、近年不確定特異点を持つホロノミー D-加群の理論は劇的な発展を遂げた。特に D'Agnolo と柏原は、不確定特異点を持つホロノミー D-加群に対するリーマンヒルベルト対応を確立した。また柏原と Schapira は、これをホロノミー D-加群のフーリエ変換に応用した。フーリエ変換は D-加群の理論で基本的な対象だが、高次元の場合の詳しい性質はほとんど未解明といってよい。我々は、柏原-Schapira の理論を用いて正則ホロノミー D-加群のフーリエ変換の詳しい性質を解明した。特にその特異集合を具体的に記述し、それに沿う指数因子や不確定度が元の正則ホロノミー D-加群の特性多様体を用いて記述できることを示した。また特性サイクルの公式を得た。さらにこの研究の副産物として、正則ホロノミー D-加群のフーリエ変換が Brylinski の意味でモノドロミック、つまり正則関数解の複体が錐的であることを示した。これらの結果は、約30年前の Brylinski の結果を拡張するものであり、さらなる発展が期待される。なお特別な場合として、合流型 A-超幾何微分方程式の特異集合に沿う指数因子や不確定度の公式が得られたことになる。これは Schulze-Walther らの結果の拡張である。幾何学的モノドロミーの研究については、これまで得られた結果を有理(型)関数のミルナーモノドロミーやその定める写像のモノドロミーに一般化した。そのために、Deligne により定義された nearby cycle 函手を有理型関数の場合に一般化し、基礎理論を整備した。また有理関数の定める複素平面への写像について、その分岐点集合のニュートン多面体を用いた上からの評価を得た。これは Nemethi-Zaharia による多項式写像についての有名な結果の拡張である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ホロノミー D-加群のフーリエ変換の研究については、正則な場合に大きな進展があった。しかしこれを一般の場合に拡張することには、まだ成功していない。また幾何学的モノドロミーの研究については、有理(型)関数のミルナーモノドロミーやその定める写像のモノドロミーという、まったく新しい研究テーマに出会うことができた。これにより、Deligne により定義された nearby cycle 函手を有理型関数の場合に一般化し基礎理論を整備するなど、大きな進展があった。さらに有理関数の定める複素平面への写像について、その分岐点集合のニュートン多面体を用いた上からの評価を得た。しかしながら、以前より挑戦していたモノドロミー予想については、まだ一般的な解決のための方針がたっていない。
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Strategy for Future Research Activity |
ホロノミー D-加群のフーリエ変換の研究については、より一般のホロノミー D-加群を扱うために、まず具体例の計算からスタートする。この場合、多項式や有理式の定める複素平面への写像の特異性の研究を詳しく行う必要がある。これについて海外の特異点理論の研究者による多項式の場合の先行研究をモデルとして、研究を進めたいと考えている。またモノドロミー予想については、モチヴィックゼータ関数や混合ホッジ加群を用いた証明を模索する。そのために、これらについて精力的に研究を行っている研究者との交流を深め、さらに多くの関連書籍を購入する。
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Research Products
(6 results)