2017 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
17H02854
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
中西 賢次 大阪大学, 情報科学研究科, 教授 (40322200)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
水谷 治哉 大阪大学, 理学研究科, 准教授 (10614985)
眞崎 聡 大阪大学, 基礎工学研究科, 准教授 (20580492)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 非線形波動 / ソリトン / 散乱理論 / 解の爆発 |
Outline of Annual Research Achievements |
眞崎は非線形 Schrodinger 方程式の時間大域挙動について修正散乱理論の観点から研究を行い、線形項・非線形項が特異性を持つ場合への拡張として、修正散乱の成立および不成立の結果を得た。具体的には、1次元の排斥的デルタポテンシャルを持つ方程式に対し、小さな初期値の修正散乱理論を構築した。また、3次元の非整数臨界冪を持つ一般の斉次非線形項について、その絶対値部分が消えていない場合は修正散乱が成り立たない事を示した。 水谷は逆二乗冪関数を含む尺度臨界な線形ポテンシャルを伴った Schrodinger 方程式の解の時間大域挙動について考察した。斉次方程式に対しては局所平滑化効果を示し、非斉次方程式に対しては局所平滑化効果と Strichartz 評価を組み合わせた時空間評価を証明した。 中西はその大域的 Strichartz 評価と、concentration compactness の論法および球対称 Strichartz 評価の更なる平滑化効果を組み合わせることにより、4次元球対称の場合に、波動方程式を満たす二乗可積分ポテンシャルに対する大域的 Strichartz 評価を証明した。更にそれを用いて Zakharov 系に対するエネルギー散乱と爆発を4次元球対称の場合に基底状態エネルギー未満まで拡張した。また、中西と眞崎は量子効果を含めた4階の Zakharov 系および非線形 Schrodinger 方程式の時間大域挙動について考察し、ソリトンに対する変分法的特徴付けと、小さな解の散乱の結果を得た。これらは、安定・不安定のソリトンが共存する場合の大域挙動解析の第一歩である。 また中西は、非線形 Schrodinger 方程式の散乱理論についてランダム化した終値問題を考察し、二乗可積分のデータで Strauss 冪より低い非線形項まで確率1で解の一意存在を示すことに成功した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度の研究成果は、結論自体あまり華々しいものは無いが、技術的な面を含めて今後の発展が大いに期待できるものである。特に、線形ポテンシャルの Schrodinger 方程式に対する結果や手法を非線形問題に取り入れて、波動方程式の解をポテンシャルとする場合に、小さな量を全く含まない定量的な結果が得られたことは、非線形方程式の大きな解の大域挙動解析のために重要な進展と考えられる。また、量子項を含む方程式に対する解析や、ランダム化した散乱問題に対する結果も、次年度以降の研究を進める重要な手掛かりになると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究でも当初計画通り (1)安定ソリトンを含む大域ダイナミクス (2)様々なソリトンと周辺のダイナミクス (3)新たな解の探索 (4)線形化時空評価 (5)線形化作用素のスペクトル (6)波動乱流 (7)確率波動、を課題として研究を進めるが、上記の成果を踏まえて特に(1)(4)(7)の進展に向けて注力する。他方、(3)(5)(6)については本格始動に向けて試行錯誤を続ける。
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