2018 Fiscal Year Annual Research Report
古典および量子統計的システムにおける新規な情報幾何構造の探究
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17H02861
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
藤原 彰夫 大阪大学, 理学研究科, 教授 (30251359)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
佐藤 譲 北海道大学, 電子科学研究所, 准教授 (30342794)
杉田 洋 大阪大学, 理学研究科, 教授 (50192125)
長岡 浩司 電気通信大学, 大学院情報理工学研究科, 名誉教授 (80192235)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 情報幾何学 / 局所漸近正規性 / ランダム力学系 / 統計多様体 |
Outline of Annual Research Achievements |
確率分布空間の微分幾何構造の研究に源を発する情報幾何学は,様々な分野で応用され成功を収めてきたが,その理論体系自体は未だ発展途上であり,重要な未解決問題が数多く残されている.本研究では,量子局所漸近正規性に係わる情報幾何構造の研究,およびランダム力学系に内在する情報幾何構造の研究を2本の柱として位置づけ,研究を推進する.またこれと並行して,従来の情報幾何学では扱われなかった新規な研究対象を発掘し応用する.そして,こうした研究を通じ,統計数学における幾何学的方法の体系化を目指す. 本年度は,情報幾何学の新規な研究対象の発掘を目的として,量子情報科学において標準的に用いられている観測技術の一つである量子トモグラフィの情報幾何構造について研究した.d次元量子系の表現空間が相互不偏性条件を満たす(d+1)組の正規直交基底を持つと仮定する.このとき,各正規直交基底が生成する射影的測定をランダムに混合した測定を,ランダム量子トモグラフィーという.本研究ではまず,相互不偏基底全体が量子状態空間の基底をなし,それに対応する展開係数(仮にξとする)とランダム化の比率(仮にsとする)を統合した実数の組(ξ,s)が,測定結果の確率分布を表すd(d+1)次元ベクトル全体空間Pの座標系をなすこと,ξを固定したe-自己平行部分多様体E(ξ)と,sを固定したm-自己平行部分多様体M(s)は,標準Fisher計量に関するPの直交葉層化を与えることを示した.さらに,測定値から最尤推定値を求める操作は,標準Fisher計量に関する単純なm-射影ではなく,測定値に対応する経験分布が属する葉 M(s)ごとに定まる変形Fisher計量に基づくm-射影となることを明らかにした.本研究は,数学的に新規な情報幾何構造を明らかにしただけでなく,実験現場において最尤推定値を高速に計算するアルゴリズムも与えるものである.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
従来知られていなかった量子トモグラフィーの新しい情報幾何構造を明らかにすると共に,それを量子計測技術へ応用する方法を見出すことにも成功したことは,大きな進展である.
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Strategy for Future Research Activity |
量子局所漸近正規性の理論やランダム力学系の理論をさらに発展させていくとともに,情報幾何学の新たな研究対象も合わせて発掘していく.
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Research Products
(3 results)