2020 Fiscal Year Annual Research Report
古典および量子統計的システムにおける新規な情報幾何構造の探究
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17H02861
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
藤原 彰夫 大阪大学, 理学研究科, 教授 (30251359)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
佐藤 譲 北海道大学, 電子科学研究所, 准教授 (30342794)
杉田 洋 大阪大学, 理学研究科, 教授 (50192125)
長岡 浩司 電気通信大学, 大学院情報理工学研究科, 名誉教授 (80192235)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 情報幾何学 / 局所漸近正規性 / ランダム力学系 / 統計多様体 |
Outline of Annual Research Achievements |
確率分布空間の微分幾何構造の研究に源を発する情報幾何学は,様々な分野で応用され成功を収めてきたが,その理論体系自体は未だ発展途上であり,重要な未解決問題が数多く残されている.本研究では,量子局所漸近正規性に係わる情報幾何構造の研究,およびランダム力学系に内在する情報幾何構造の研究を2本の柱として位置づけ,研究を推進する.またこれと並行して,従来の情報幾何学では扱われなかった新規な研究対象を発掘し応用する.そして,こうした研究を通じ,統計数学における幾何学的方法の体系化を目指す. 本年度は,研究代表者らの先行研究(Annals of Statistics, vol. 41 (2913) 2197-2217)で展開した弱い意味での量子局所漸近正規性の理論の適用範囲を本質的に拡大することを目指して,まず古典測度論や確率論において本質的な役割を演ずる Lebesgue 分解の非可換拡張の研究を行なった.その結果,上述の先行研究で導入した量子相互絶対連続性の概念と完全に整合した形での量子絶対連続性と量子特異性の概念を定式化することに成功すると共に,任意に与えられた2つの量子状態ρとσに対し,σをρに対して絶対連続なパートと特異なパートとに分解する量子 Lebesgue 分解の存在と一意性を証明することにも成功した.これは「作用素の台の包含関係に基づく Lebesgue 分解」という伝統的な着想とは根本的に異なる定式化となっている.引き続き,非可換 contiguity 理論の研究にも着手し,量子局所漸近正規性の理論の適用範囲を本質的に拡大することに成功した. 本年度はさらに,長年の未解決問題であった量子単調計量の双対平坦化可能性についても研究に着手した.その結果,2準位量子系に限った場合ではあるが,任意の単調計量が双対平坦化可能であることの証明に成功するという大きな進展があった.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
従来の定式化とは本質的に異なる非可換 Lebesgue 分解定理の導出に成功し,量子 contiguity の理論を確立できたことは,量子統計的漸近理論における極めて大きな進展である.さらには,量子情報幾何学における未解決問題であった単調計量の双対平坦化について予想外の大きな進展があったことも特筆すべきである.
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Strategy for Future Research Activity |
今年度の研究で見出された非可換 Lebesgue 分解定理や contiguity 理論を補完するため,いわゆる「表現定理」の非可換拡張を確立し,量子局所漸近正規性の理論の完成を目指す.
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Research Products
(3 results)