2019 Fiscal Year Annual Research Report
GeVガンマ線観測を基軸とした多波長観測による星間ガスの定量
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17H02866
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
水野 恒史 広島大学, 宇宙科学センター, 准教授 (20403579)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 星間ガス / 多波長観測 / 宇宙線 |
Outline of Annual Research Achievements |
前年度に引き続き,Fermi衛星のガンマ線データを中心とした,高銀緯(近傍)の分子雲・原子雲の解析を進めた。カメレオン分子雲領域の解析では,ガンマ線データに基づき星間ガス密度とダスト放射の間の非線形成を見出し,星間ガスの性質(光学的厚さやガス総質量)について詳細な議論を行った。また非線形成を取り込むことで,宇宙線強度が直接観測と矛盾しないという新しい結果が得られた。この結果はHayashi, Mizuno, et al. 2019 (ApJ 884, 130)として出版された。また強いCO分子雲輝線の見られない原子雲領域の解析では,南北に分けた解析を行い宇宙線密度がほぼ一定であることを実証した。加えてスピン温度の仮定によらず星間ガス密度と宇宙線密度の測定に成功した。数100MeV程度以下の低エネルギーではモデルとの系統的なずれがみられ,宇宙線スペクトルの折れ曲がり由来の可能性を指摘した。これらの成果はMizuno et al. 2020 (ApJ 890 120)として出版された。また宇宙線直接観測(AMS02, Voyagerの公開データ)とガンマ線観測を合わせた宇宙線スペクトルのモデル化の枠組みを開発した。宇宙線伝播を露わに解く先行研究に対し,簡単な(ただし必要十分な自由度を持った)解析関数を導入することで計算コストを大幅に低減しつつ遜色ない精度を実現できた。予備的な結果を2020年3月の日本物理学会で報告し,完成度を高めたものをフェルミグループ内で報告をした。現在はこの宇宙線スペクトルモデルの枠組みを活用し,また中性水素からの21cm線の輝線幅を利用したガスモデル・ガンマ線解析に取り組んでいる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究実績で述べたように,カメレオン分子雲領域・高銀緯原子雲領域の解析で各々成果(星間ガスとダスト放射の非線形成や,宇宙線密度の一様性の実証など)をあげ,共に論文として出版できた。加えて宇宙線スペクトルのモデル化の枠組みを開発し,HI輝線幅を用いた新しい解析に取り組んでおり,おおむね順調に進展していると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
研究実績で述べたように,宇宙線スペクトルのモデル化の枠組みおよび,HI輝線幅を用いた新しいガスモデルとガンマ線解析への応用に取り組んでいく。前者は宇宙線スペクトルの詳細(折れ曲がりの有無など)を調べるのに有効であり,フェルミのガンマ線データが本質的な役割を果たす。後者は,HI輝線幅が広いガスは光学的に薄いという仮説を検証するもので,この仮説が実証できると,銀河面のガンマ線放射解析(による星間ガスと宇宙線分布の定量)の精度を大きく高めることができる。過去の解析で経験と知見を有する高銀緯領域に適用し,これらの道具立て・仮説の有効性を確立させる。
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Research Products
(7 results)