2018 Fiscal Year Annual Research Report
大革命をもたらす高精度位置天文観測データを用いた天の川銀河の研究
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17H02870
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Research Institution | National Astronomical Observatory of Japan |
Principal Investigator |
郷田 直輝 国立天文台, 光赤外研究部, 教授 (50202073)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
辻本 拓司 国立天文台, 光赤外研究部, 助教 (10270456)
矢野 太平 国立天文台, 光赤外研究部, 助教 (90390624)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 位置天文学 / 銀河系 |
Outline of Annual Research Achievements |
(1) 速度場の共鳴効果を用いた非軸対称構造の物理情報の解析:研究分担者、および研究協力者(馬場(国立天文台)、服部公平(ミシガン大)等)との共同研究で、Gaiaの観測で得られたヘラクレス運動星団の特徴を説明するためのバー構造やスパイラル構造の物理的特徴の条件に関する知見を得ることができた。その成果は査読付き学術論文に掲載することができた。 (2) 太陽運動等に関する物理情報の再評価:実際の星は固有の速度をもち、その固有速度の分布に伴う速度分散が存在するが、太陽運動やオールト定数(太陽系近傍の銀河回転に関する速度場の情報)等を決める際にその速度分散の効果を無視するという仮定を行うことが多かった。そこで、速度分散の効果を取り入れた解析方法の構築や実際のGaiaの観測データを用いた解析を行い、その効果をうまく対処する方法が新たに分かってきた。 (3)位相分布関数を用いた力学構造の解析と銀河系中心核バルジの起源と進化の検討:巨大ブラックホールの進化にも関連する、銀河系中心核バルジでの星の緩和状況を判断する手法等を研究分担者と引き続き検討した。また、中心核バルジの星形成史の解明を目指して、中心核バルジ内の星団の同定化の解析方法の新たな構築を進めることとなった。さらにミラ型変光星を用いた中心核バルジに関する解析方法等の検討を行った。 (4)コミュニティによるコアグループの活動継続:研究協力者等と今後の戦略を練るワークショップを公開で開催し、活動を引き続き進めた。また、小型JASMINEのサイエンスの検討も行った。 (5)国際連携:研究協力者(山田(京大))を中心にデータ解析手法の検討を海外の共同研究者と努めつつ、科学的成果創出のための今後の戦略を検討してきた。さらに、研究協力者(河田(UCL))との連携を図り、国際的なコミュニティの拡大を図る計画を練った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
(1) 太陽系近傍のヘラクレス運動集団を用いた、銀河系の非軸対称構造の物理的特徴の解明に関して検討が進み、学術論文に出版されたため、目標達成と考える。 (2) 非軸対称構造による共鳴効果を考慮した、太陽運動等に関する物理情報の再評価に関しては、次の通りである。太陽運動やオールト定数(太陽系近傍の銀河回転に関する速度場の情報)等を決める際に従来は様々な仮定がおかれている。例えば、銀河系の速度場に対し、連続的で滑らかな単一の速度場を仮定している。年度開始時はこの仮定が妥当ではない場合の解析を行う予定であったが、その前に結果への影響が強いと考えられる別の仮定に関する検討を先ずは行うこととした。このように戦略を変更したが、かなりの解析が進み新しい知見も得られたため、ほぼ目標は達成したと考えている。 (3) 位相分布関数を用いた力学構造の解析は、解析を終えて早く論文化を行いたいと考えているが、そこはすこし遅れ気味であり、目標にはわずかに達成できていない段階である。しかし、 銀河系中心核バルジの起源と進化の検討に関しては、星団の同定化の解析方法の新たな構築を進める戦略を得た。さらにミラ型変光星を用いた中心核バルジに関する解析方法等の検討を行った。よってほぼ目標は達成したと考えている。 (4)コミュニティによるコアグループの活動として、研究協力者等と今後の戦略を練るワークショップ(天の川銀河バルジ研究会 2018)を公開で開催し、共同研究を推進することにつながった。以上より、目標は達成と考える。 (5)海外の関連するプロジェクトとの連携に関しては、Gaiaデータの品質情報の取得やデータ解析手法の検討を努めつつ、科学的成果創出のための今後の戦略を検討してきた。さらに、研究協力者との連携を図り、国際的なコミュニティの拡大を図る計画を練った。以上より、目標を達成と考える。
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Strategy for Future Research Activity |
(1)太陽運動等に関する物理情報の再評価:太陽運動やオールト定数(太陽系近傍の銀河回転に関する速度場の情報)等を決める際に従来は様々な仮定がおかれている。例えば、実際の星は固有の速度をもち、その固有速度の分布に伴う速度分散が存在するが、その速度分散の効果を無視する仮定を置かれることが多かった。そこで、速度分散の効果を取り入れた太陽運動とオールト定数の解析方法の構築や実際のGaiaの観測データを用いた解析も行ってきている。今後も引き続き研究を行い、解析方法のブラッシュアップを図りつつ、論文化を進める予定である。 (2)位相分布関数を用いた力学構造の解析:星の位相分布関数を用いて、銀河系中心核バルジのグローバルな力学構造の構築を引き続き検討する。特に、巨大ブラックホールの進化にも関連する、銀河系中心核バルジでの星の緩和状況を判断する手法等をさらに検討し、論文化を進める。 (3)銀河系中心核バルジの起源と進化の検討:中心核バルジでの星や星団の起源や進化に関して、今後の観測データからどのようなことが分かるのかの検討を行う。特に星団のメンバーを同定する解析方法の検討等を行う予定である。 (4)コミュニティによるコアグループの活動継続:共同研究者と今後の戦略を練る会合を開催し、活動を引き続き進める。さらに国際連携も広げるため、小型JASMINEで期待される科学的成果についての議論を海外にいる研究者とも行う。
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Research Products
(11 results)