2017 Fiscal Year Annual Research Report
Search of Gluon Shockwave with Di Jets detection
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17H02876
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
三明 康郎 筑波大学, 数理物質系, 教授 (10157422)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
江角 晋一 筑波大学, 数理物質系, 准教授 (10323263)
中條 達也 筑波大学, 数理物質系, 講師 (70418622)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | クォーク・グルオンプラズマ / 高エネルギー原子核実験 |
Outline of Annual Research Achievements |
RHICにおける相対論的原子核・原子核衝突実験から新たな物質状態としてクォーク・グ ルーオンプラズマ状態(QGP)が見つかった。LHC加速器においても実験が始まり、QGP発見からQGP物性測定のステージに進んでいる。 QGP物性の直接的測定には、高エネルギーパートンによって引き起こされるQGP中のグルーオン場の衝撃波観測が極めて有力である。本研究は、我々が建設したDi-Jet測定装置及びDi-Jetトリガー装置を駆使してグルーオン衝撃波の探索を行う。この目標に向けて、3つのステップ、①Di-Jet識別装置の運用とジェット識別解析、②Jet Tomography解析、③衝撃波探索、で研究を進めている。 平成29年度には、陽子・陽子衝突においてデータ収集を実施し、既に確立したDi-Jetトリガー、γ-Jetトリガーを運用することができた。これらのデータは鉛・鉛衝突と比較対照するためのリファレンスデータとなる。物理解析として荷電粒子を用いたジェット解析を完成した。荷電粒子を用いたジェット解析からQGP中のパートンのエネルギー損失の解析を実施し、世界最高エネルギー(√SNN=5.02 TeV)鉛鉛衝突における荷電粒子ジェットの横運動量分布を測定することに成功し、以下の重要な知見が得られた。(1)RHIC ( 200 GeV, 金・金衝突)と比べてエネルギー損失率(dE/dx)が約4~5倍であること、(2)エネルギー損失の通過距離(L)依存性がLの1乗ではなく、Lの2乗に近いことを示唆すること、がわかった。(1)は、QGP中のパートンのエネルギー損失は、グルオン密度に比例していること、(2)は、グルオンが色電荷を持つというQCDの特徴を示唆していると考えられ、エネルギー損失機構の理論に重要な制限を加える重要な成果と考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
実験遂行状況としては、平成29年度には、LHC-ALICE実験における測定を実施し、Di-Jet識別装置及びJetトリガー装置の運用を安定して行うことができた。Di-Jet識別装置を構成する電磁カロリメータDCALのゲイン調整などの調整や解析プログラムの整備を着実に行い、従前の電磁カロリメータEMCALと同等の性能を発揮することができるようになった。 物理結果として、平成29年度に完成した荷電粒子を用いたジェット解析からは、以下の重要な知見が得られた。(1)RHIC ( 200 GeV, 金・金衝突)と比べてエネルギー損失率(dE/dx)が約4~5倍であること、(2)エネルギー損失の通過距離(L)依存性がLの1乗ではなく、Lの2乗に近いことを示唆すること、がわかった。これらの結果は、本学大学院生の横山広樹氏の博士論文として提出された。さらに、荷電粒子ジェットだけでなく、電子・光子のデータを含むフルジェット解析を推進させ、フルジェット解析によるジェット生成量解析を進めている。 本研究は、3つのステップ、①Di-Jet識別装置の運用とジェット識別解析、②Jet Tomography解析、③衝撃波探索、で研究を進めているが、Di-Jet識別装置、Di-Jetトリガー装置は順調に運用されており、①Di-Jet識別装置の運用とジェット識別解析、についてはほぼ達成しつつある。②を進めるためのフルジェット解析も順調に進められている。
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Strategy for Future Research Activity |
3つのステップを着実に進めていく。①Di-Jet識別装置の運用とジェット識別解析、についてほぼ達成されたと考えている。②Jet Tomography解析に向けて、既に我々が新設したカロリメータの性能評価も終え、解析プログラムの調整も順調である。これらを駆使したフルジェット解析も鋭意進めている。平成30年度にはフルジェット解析において荷電粒子ジェット解析に比べて分解能の向上や統計数の向上を目指している。フルジェット解析によるジェット生成量の鉛・鉛衝突/陽子・陽子衝突比を論文にまとめたい。また、学会発表を適宜行う。 ③衝撃波探索、に向けて予備的な解析も進めている。高エネルギー原子核・原子核衝突は有限系かつハードとソフトが絡み合った現象である。グルーオン衝撃波を構成するソフトな信号とジェットに引き起こされるハードな信号を如何に解きほぐすかの方法論を検討している。周辺衝突から中心衝突への粒子相関分布の変化をハードな信号がメインと考えられる周辺衝突の粒子相関からの差分として解析するなどの手法を試しているところである。 収集データの統計量が最終的に大きな影響を与える。Di-Jetトリガー装置は有効な手段であったが、さらに統計量を増やす努力を進めている。また、測定可能領域を拡大するための検出器開発も進めている。
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Research Products
(14 results)