2017 Fiscal Year Annual Research Report
高強度レーザー場と高輝度X線を用いた真空の巨視的構造の探索
Project/Area Number |
17H02879
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Research Institution | High Energy Accelerator Research Organization |
Principal Investigator |
山崎 高幸 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構, 物質構造科学研究所, 助教 (40632360)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 素粒子実験 / X線 / 高性能レーザー |
Outline of Annual Research Achievements |
高強度レーザー場で真空を励起し、X線自由電子レーザー(XFEL)をプローブとして、真空複屈折・真空回折といったマクロな物理量として現れる真空偏極を探索している。真空偏極の大きさはレーザーのインテンシティに比例するため、レーザーを回折限界のμmサイズまで絞る技術が極めて重要である。さらに、集光したレーザーとXFELを時間的・空間的にアライメントする手法も必須となる。まずはSACLAのXFELおよび同期レーザー(~1mJ)を用いてプロトタイプ実験を行い、10μmレベルでの集光・アライメントを達成し、世界で初めて真空回折現象に対する制限を与えた。 また、真空回折実験と同じセットアップでSPring-8でビームテストを行い、真空回折実験における最大のバックグラウンドがスリットの端でX線が回折されることによって生じることを突き止めた。これを抑制するため、従来にないX線光学素子(シェイパー)の設計・開発を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
真空回折実験のバックグラウンド事象を特定し、バックグラウンドを抑制するための新たな光学素子(シェイパー)の開発をすすめた。また、SACLAのXFELおよび同期フェムト秒レーザー(0.25TW)を用い、10μmサイズでXFELとレーザーを衝突させて真空回折のプロトタイプ実験を成功させた。 本研究では高性能X線偏光子が必須となるが、これまでに開発したX線偏光子は消光比が10のマイナス8乗程度と、世界最高性能のものより2桁性能が低かった。この原因として、性能評価に用いたビームラインのX線全反射ミラーでの散乱が考えられた。全反射ミラーが平成30年度に新たなものに交換されるまで待って再測定することとしたため、X線偏光子の開発についてはやや遅れている。
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Strategy for Future Research Activity |
X線の回折によるバックグラウンド事象を抑制するため、新たに開発したX線光学素子(シェイパー)をSPring-8のX線ビームを用いて性能評価を行う。また、真空複屈折探索に必要なX線偏光子についても同様に高輝度X線ビームを用いて性能評価を予定している。 また、高強度レーザーの集光サイズは現在10μm程度であり、目標とする回折限界1μmより1桁大きい。これは、高強度レーザーの波面が揃っていないことによると考えられるため、デフォーマブルミラーを導入し波面を整形することでμmサイズの集光を目指す。まずは低強度のレーザーで波面整形技術を確立した後、SACLAの同期フェムト秒レーザー(10mJ)に適用する。
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