2020 Fiscal Year Annual Research Report
高輝度 LHC 実験に向けたミュー粒子トリガーの高度化
Project/Area Number |
17H02880
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
奥村 恭幸 東京大学, 素粒子物理国際研究センター, 准教授 (90779266)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
石野 雅也 東京大学, 素粒子物理国際研究センター, 教授 (30334238)
|
Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2022-03-31
|
Keywords | LHC-ATLAS実験 / ミューオントリガー / Associative Memory / 高速パターン認識技術 / 高輝度LHC実験 / System on chip / システム制御 |
Outline of Annual Research Achievements |
高速再構成アルゴリズムについては、本年度は研究成果をまとめるフェーズであった。開発された技術をドキュメント化し、また国際会議(Virtual 2020 IEEE Nuclear Science Symposium & Medical Imaging Conference)において発表を行い、結果を公表した。トリガーシステム間におけるデータフォーマットの確立や、光通信技術(特にレイテンシーを固定した特殊な用途での光通信技術)の確立等が本年度に達成され、これらの技術は、高輝度LHC実験においてそのまま用いられる予定である。
トリガーシステムの高輝度化のために必要不可欠であるSystem-on-a-chip (SoC)技術を用いた先端制御系の開発・実装を発展研究として展開してきた。この課題について本年度はプロトタイプを完成させ、その実機プロトタイプを用いた試験が開始された。プロトタイプの基礎動作の確認、機能の実装を達成し、実機を用いて正常に動作することをデモンストレーションするに至った。この経験を元にさらに第二試作機について本年度後半に作成・試験を行い、本番実機に向けたデザインを完成させた。またこれらを元に Quality Assuarance 検査項目の策定も達成され、これは本番実機量産のときに用いられる。これらについて、国際会議での発表を行い、積極的に開発技術を共有した。
プロトタイプの動作検証が進んだことにより、高輝度LHC実験で用いるアプリケーションである、クロックフェーズ測定機能の実装にも取り組んだ。クロック信号の周期性や、最新のFPGAの高速処理、さらに時間ジッターを最小にするように最適化されたファームウェアの実装を行い、20psの精度でリモートでクロックフェーズをモニターする新しい技術開発に成功した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
Associative Memory技術を応用したミューオンオンライン高精度再構成技術について、開発研究はすべて完了し、またそのデモンストレーションの研究、国際会議での公表等、概ね本年度等当初の予定通りに研究は進んでいる。高輝度LHCに向けて着々と研究が進展するが、実装に向けた研究も当初の予定通り進んだ。国際的な研究組織が本研究組織を基盤として組織され、共同研究が進んでいる。
制御機構の高度化の研究も概ね順調に進んだ。本年度初頭にプロトタイプを完成させた。またその実機動作試験を通じて必要な機能実装に取り組み、これらは予定通り遂行された。作成したプロトタイプも重要な欠陥は発見されず、ほとんど本番に使える回路であることが実機を用いて実証されたことも、予定通りに研究が進むために重要な点であったといえる。
SoC、FPGAを用いて高輝度LHC実験のために、フェーズ測定技術を新技術として開発したが、これは当初予定した以上に発展的な研究が展開された。この点においては予想以上の研究の進展があったと言える。トリガーの高度化において重要な技術となるため、2021年度においてさらなる発展が期待される。
|
Strategy for Future Research Activity |
本年度は最終年度として、これまでの技術開発を集約し、トリガーシステムの高度化の実装の段階に向けた研究を重点的ににすすめる。 1. 実装に向けた System-o-a-chip(SoC)技術を用いた先端制御系の開発を継続して行い、キャリブレーションや性能のモニター、エレクトロ ニクスの制御をリモートで確実に行うシステムの開発及びその実装を行う。前年度までに開発したプロトタイプエレクトロニクスを用いたコミッショニングシステムを活用し、システムレベルでの機能の確立を遂行する。特に安定したオンラインミュー粒子再構成のために必要不可欠な技術である、高輝度LHCのミューオントリガーの実装に向けたフロントエンド部の、基本機能の導入(クロック配布系の開発、クロック位相の自動モニタリングシステムの開発、データ収集系の開発、自動復帰の確立)の研究を特に進める。開発・実装を完了し、その機能実証をテストベンチシステムを用いて完了する。 2. バックエンドエレクトロニクスの制御系の開発を行う。バックエンドエレクトロニクスのプロトタイプを用いて、特に実験の制御系ソフトウェアとエレクトロニクスの接続を担うハードウェアを SoC 技術を用いて開発し、実装に備える。 3. 複数のサブシステムの複合体である高輝度LHCのハードウェアトリガーシステムのシステム間のインターフェースの確立に向けた研究を遂行する。システム全体を稼働させるためにデータフォーマットの策定・改善及び、高速シリアル通信のためのハードウェア・ファームウェアの開発・実装を行う。
|
Research Products
(6 results)