2018 Fiscal Year Annual Research Report
Exploring the origin of CMB anomaly with spontaneous symmetry breaking
Project/Area Number |
17H02894
|
Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
早田 次郎 神戸大学, 理学研究科, 教授 (00222076)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
野海 俊文 神戸大学, 理学研究科, 特命助教 (30709308)
|
Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2022-03-31
|
Keywords | インフレーション / 自発的対称性の破れ / 低エネルギー有効理論 / 統計的非等方性 |
Outline of Annual Research Achievements |
宇宙マイクロ波背景放射(CMB)観測衛星WMAPによって、CMB温度揺らぎに統計的非等方性などの異常な性質(CMBアノーマリー)が発見された。そのような中、我々は非等方性の生成機構を発見し、CMBアノーマリーの理解に貢献した。本研究では、自発的対称性の破れという観点から、さらにこの研究を発展させ、多様なCMBアノーマリーの物理的機構を明らかにする。その研究成果をもとに新たな現象を予測し、観測の将来計画に指針を与える。さらに、CMBアノーマリーの背後にある初期宇宙を支配する究極理論を探求する。 本年度、研究代表者の早田は、自発的に対称性の破れた背景での原始重力波の統計を調べ、高周波数モードの場合サブポアッソン統計分布を示す可能性があることを示した。古典論的な重力波生成であればサブポアッソン分布は生じないことが分かっているので、これは重力子の観測可能性を示すものであり、画期的な成果である。また、時空のパリティー対称性の破れを重力波の伝搬を通して検証できることを明らかにした。 インフレーション中の宇宙はハッブルスケール程度の温度を持った様々な粒子で満たされている。原始ゆらぎがこれらの熱浴と相互作用していると、粒子生成の効果に伴い非ガウス性などの観測量に影響が現れると期待される。本年度、分担者の野海は、時間並進対称性の自発的破れに基づく「原始ゆらぎの有効場理論」にこのような粒子生成の効果を取り込むことに成功した。構成した有効理論はインフレーションだけでなく時間結晶や同期現象などの物性系への応用も期待される。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
自発的回転対称性の破れに伴う南部・ゴールドストーンモードに対する低エネルギー有効理論の構築に取り組み、それをもとに四重極的非等方性の普遍性を明らかにするという研究目標はほぼ達成されたが、他の方向で興味深い展開があったために、論文の出版は遅れている。具体的には、ゲージ場による回転対称性の破れが、原始重力波の量子性の観測に重要な役割を果たすことを明らかにしたことや、環境があるなかでの自発的対称性の破れがある場合の有効理論の構築など、顕著な成果を出している。その意味で、研究はおおむね順調に進展している。
|
Strategy for Future Research Activity |
今後は、研究員を雇い、遅れ気味であった論文作成を行う。特に、構築した低エネルギー有効理論をもとに、統計的非等方度の具体的な表式、テンソルと曲率揺らぎの相関、非ガウス性などの計算を論文として出版できるようにする。Planck等の観測データと比較し、低エネルギー有効理論のパラメータへどのような制限が得られるのかを明らかにしていくことが今後の課題である。回転対称性以外の場合へ低エネルギー有効理論を拡張する研究もさらに進めていく。新たな方向性として、対称性の破れの概念を高階スピンの理論へと拡張することで、未解明のCMBアノーマリーの物理的機構の解明に取り組んでいく。 他分野との交流に関しても、素粒子論、物性理論、ハドロン物理の各分野から第一線の研究者を招聘し、講義をしていただくことで進めていきたい。
|
Research Products
(27 results)