2017 Fiscal Year Annual Research Report
Development of unified model for high-energy nuclear collisions and physics of quark gluon plasma
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17H02900
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Research Institution | Sophia University |
Principal Investigator |
平野 哲文 上智大学, 理工学部, 教授 (40318803)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
奈良 寧 国際教養大学, 国際教養学部, 教授 (70453008)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | クォークグルーオンプラズマ / 高エネルギー原子核衝突 / 相対論的流体力学 / 流体揺らぎ / QGPの阻止能 / 輸送係数 |
Outline of Annual Research Achievements |
ビッグバン直後の宇宙を占めていた素粒子極限物質「クォーク・グルーオン・プラズマ(quark gluon plasma, QGP)」の物性を研究すべく、高エネルギー原子核衝突実験がアメリカ・ブルックヘブン国立研究所の相対論的重イオン衝突型加速器RHICやヨーロッパ原子核共同研究機構CERNの大型ハドロン衝突型加速器LHCで行われている。本研究では衝突反応のダイナミクスを統合的に記述するモデルを作成し、それを用いてQGP物性をより精密に求める課題である。 初年度は(1)既存のモデルによる現状の把握と(2)動的初期化モデルを用いたQGP流体生成モデルの構築を行った。 (1) まず、QGPの流体揺らぎが物理量に与える影響を調べるために、運動量空間の異なる2点の間の相関と流体揺らぎによるその破れの解析を行った。流体揺らぎを大きくするにつれ、相関が破れる様子が見えたが、実験結果の振る舞いとの一致までは見られなかった。ただし、QGPの輸送的性質の一つである流体揺らぎが物理量に与える初めての解析となった。 (2) イベントジェネレータを用いて衝突直後のパートンを生成し、それをQGP流体の初期条件にする模型の構築を行った。QGP流体の初期化は分野における長年の問題であったが、初期化の過程でエネルギーと運動量を保存するように、流体の湧き出し項を利用するアイデアに至った。これにより、QGP流体初期化の新たな手法を確立しただけでなく、低エネルギーから高エネルギーまで異なるエネルギースケールの物理を統合的に記述できる可能性を見出した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
平成29年7月、高エネルギー原子核衝突反応の専門的知識を有する研究協力者の雇用を試みたが、その方が当時の現職を平成30年3月の任期まで続ける必要があり、本研究課題の数値解析コードの構築に参画できなくなることが判明した。同様の知識を持つ新たな人材は他に居らず、やむを得なく雇用のスタートを平成30年4月まで9か月間延期をした。これにより、新たな数値解析コードの構築が遅れたものの、既存のモデルによる計算は十分新規な結果が得られた。
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Strategy for Future Research Activity |
QGPの流体揺らぎのみでは実験結果をうまく再現することができなかったため、その他の揺らぎの影響も調べつつ、統合的模型を拡張する。特に、衝突初期にQGPの形状自体が有する衝突軸方向の揺らぎは、注目している物理量に敏感だと考えられる。そのため、この効果を取り入れた上で、再度、実験結果の解析を行い、QGPの輸送的性質を探る。 動的初期化模型については、順調に進んでおり、今後はコア-コロナ描像を取り入れることで、実験結果の解析を行う。また、QGP流体中を通過するジェットとの相互作用を取り入れることで、二つの異なるエネルギースケールの競合によって起こる現象の解析を行う。 カイラル磁気効果を含む電磁場に対する応答については、課題として検討しているにとどまっており、先行研究を超えるアイデアを必要とする。
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