2018 Fiscal Year Annual Research Report
New Physics at LHC and development and construction of fast tracking system
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17H02902
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
寄田 浩平 早稲田大学, 理工学術院, 教授 (60530590)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 素粒子実験 / LHC/ATLAS実験 / ヒッグス粒子 / 新粒子探索 / 高速トラッカー |
Outline of Annual Research Achievements |
2018年度は、2017年度に引き続き「新粒子探索」と「高速飛跡トラッカーシステムの運用」の2本柱で研究を進めた。弱ボソンの散乱測定による標準模型の検証と新物理探索について、新しく提案したセミレプトニック崩壊過程の解析も論文にまとめることができた(内部校正の最終段階)。関連して行ってきた高運動量W/Zボソンの同定手法に関する論文も2本受理された。また暗黒物質の有力候補であるニュートラリーノとチャージーノの質量縮退している過程の探索力の改善も行い、Run2全データの解析を進めた。また、2018年度は、B-physicsを精査する他実験から示唆されているレプトクォークの探索をあらたに開始した。新粒子が第三世代粒子と結合する過程で、今まで行われていなかった終状態の解析を設計し、Run2全データを用いれば、1TeV付近まで探索可能なことを示すことができた。2本目の柱である高速飛跡再構成システム(FTK)は、我々が開発・運用試験を行ってき高速リアルタイムで荷電粒子の飛跡を再構成するシステムで、複数の電子回路を組み合わせて実際のデータを使った試験が重要な状況である。LHC-ATLAS実験 Run2 の最終年である2018年は、このコミッショニングにおいて大きな進捗があった。2018年末には、LHCのデザインルミノシティを超える環境下での安定的な飛跡再構成を行うことに成功した。またFTKソフトウェアの開発においても、実機運用に向けた準備が重要であるため、最新の実データに対応したフィット定数及びパターンバンクの生成を行い、FTK稼働に向けて大きく進展させることができた。今後、シャットダウン中に複合試験を繰り返し行うことで、次年度以降の本格安定稼働を目指している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
新しいチャンネルでの物理解析提案やこれまでの探索の感度向上を進めてきたものの、いまだ新物理の発見には至っていない。ただし、以前から進めていたハドロン崩壊する高運動量W/Zボソンの同定手法に関する論文2本が学術雑誌に受理された。また、電弱対称性の破れの機構を解明するために開発した同定手法を利用しW/Zボソンの散乱現象の解析も行い、年度中に論文投稿の準備を整えることができた。これに関連して、W/Zボソン散乱現象の物理結果を国際会議DIS2018で報告した。また、暗黒物質/超対称性発見を目指した消失飛跡探索においては、短い飛跡に対するアプローチが重要であるため、従来の4層飛跡よりも短い2層飛跡及び3層飛跡を用いた探索における信号事象の見積もり及び実データを用いた背景事象の評価をはじめて行い、今後の短飛跡領域探索における課題を明確にした。また、2018年度はこれまでにない新しい解析も提案した。B-physicsを精査する他実験の超過から示唆されているレプトクォークの探索である。特にこれまでの経験を活かした第三世代粒子の結合する過程で、今まで行われていなかった終状態の解析を新しく設計した。既に、LHCにおける Run2全データを用いた物理感度を見積もっており、TeV領域のレプトクォークが 実際にLHCで直接探索可能であることを示した。一方、高速飛跡再構成システム(FTK)についても、LHCのデザインルミノシティを超える環境下での安定的な飛跡再構成を行うことに成功した。オンラインモニター等の運用に必要なインフラもおおよそ整えることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
2018年に引き続きATLAS実験における「新粒子探索」と「高速飛跡トラッカーシステムの運用」の2本柱で進める。まずは電弱対称性の破れの機構の解明を目指したW/Zボソンの散乱現象の解析の最終仕上げを行い、学術論文を投稿する。また、実験データを追加し、ボソンの偏極割合を測定するなど、散乱現象の詳細を研究しさらなる理解を進めるための基礎研究をおこなう。4層飛跡を用いた消失飛跡探索においては、Run2全データを用いることによる統計量増加及びカロリメータ情報を用いた背景事象削減法の導入による探索感度の向上が期待されており、解析の完遂及び物理結果の公開を目指す。より短い飛跡や長い飛跡も用いた消失飛跡探索に関しても物理感度に対する影響力を見積もりまとめる。また、Run3に向けてFTKを活用した消失飛跡トリガーの有用性及び実現可能性についての研究を行う。これらにくわえて、レプトクォーク探索における更なる物理感度の向上も行う。新しいチャンネルを統合したり、新しいアルゴリズムを用いることで信号取得効率の増加を目指す。また背景事象の評価を含めた系統誤差の精査を行い物理結果の妥当性を正しく評価することを行う。最終的には、Run2全データを用いたレプトクォーク探索の結果を論文にまとめる予定である。一方で、2019年のLHCはアップグレードを行うためのシャットダウン中である。そのため FTK では擬似的にデータを送信するシステムを構築して運用試験を続ける。特に早稲田大グループの担当するインプット部分では改良と新規実装が重要となる。2019年度中に後段ボードも含め、FTK全領域の半分での安定的な運用を目指す。
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Research Products
(23 results)