2017 Fiscal Year Annual Research Report
二次元フラストレート量子スピン系における磁場誘起トポロジカル相転移の理論
Project/Area Number |
17H02926
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Research Institution | Fukuoka University |
Principal Investigator |
宮原 慎 福岡大学, 理学部, 准教授 (90365015)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
古川 信夫 青山学院大学, 理工学部, 教授 (00238669)
丸山 勲 福岡工業大学, 情報工学部, 准教授 (20422339)
上田 宏 国立研究開発法人理化学研究所, 主任研究員研究室等, 基礎科学特別研究員 (40632758)
山本 大輔 青山学院大学, 理工学部, 助教 (80603505)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 磁性 |
Outline of Annual Research Achievements |
フラストレート系では、様々なエネルギー最適化の条件が競合し、系がそれらの条件を同時に満たせないため、特異な揺らぎが生じ、特異な物性が出現することが期待されている。本研究では、二次元フラストレート量子スピン系の磁化曲線中にあらわれる磁化プラトー相(磁化の平坦領域)の量子状態をトポロジカルな視点から明らかにし、プラトーと非プラトー相間のトポロジカルな量子相転移の起源を理解することを目指し研究に取り組んでいる。 従来、二次元フラストレート系に適用可能な計算手法は数少なかったが、最近の数値計算手法の発展により、対象とする系での大規模計算が可能となった。本年度は、DMRGを中心とした大規模数値計算を実行し、異方的三角格子ハイゼンベルク模型の磁場中基底状態を明らかにする研究に取り組んでいる。現在、フラストレーションに起因した特異な量子状態が出現することを示唆する結果を得ている。来年度以降、更に大規模な系での計算を実行し、多方面から研究を発展させることで、特異な量子状態の存在の有無を確立することが期待される。 また、厳密な基底状態をもつ一次元フラストレート磁性体の磁場中基底状態を明らかにし、磁化プラトー相の量子状態をベリー位相というトポロジカルな量で特徴づけることに成功した。磁場中のスピン系で、新たなトポロジカル状態を発見することは、量子コンピューティングの土台構築など、将来的に広く社会に貢献することにつながると期待されている。更に、三次元コランダム系の量子相転移について、ベリー位相による特徴づけを試みるなど、一般的な磁性体への応用にも理論発展を目指している。 来年度以降もこうした研究成果を発展させ、フラストレートスピン系のトポロジカルな相転移に関する基盤研究の確立を目指す。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
DMRGを中心とした大規模数値計算を実行し、異方的三角格子ハイゼンベルク模型の磁場中基底状態を明らかにする研究を行った。本年度の研究成果により、フラストレーションの強いパラメータ領域で新規プラトー相が実現することを示唆する結果をえた。しかし、系のサイズ効果の影響が当初想定していたよりも大きく、この結果を確立するためには、更に大規模計算を実行する必要があり、30年度も引き続き研究を進める必要がある。大規模計算の結果も含め、多方面から研究を発展させることで、特異な量子状態の存在の有無を確立することが期待されている。当初計画では、本年度のうちに、磁化プラトー存在の有無を確立する予定であったため、このテーマに関する進捗状況は、やや遅れていると評価する。 一方で、厳密な基底状態をもつ一次元フラストレート磁性体の磁化プラトー相をベリー位相というトポロジカルな量で特徴づけることに成功し、この成果について、現在、論文執筆中である。磁化プラトー状態とトポロジカルな状態との関連性については、平成30年度以降に取り組む予定であったが、この問題を扱うのに適切な模型があることが分かり、当初の予定よりも早めにこの問題に取り組みはじめ、順調に成果を得ている。 このように、初年度の主要テーマである異方的三角格子の磁化プラトーについての研究に少し遅れが見られるため、現在までの進捗状況の評価は、やや遅れているとした。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、今年度の成果を発展させ、次のように研究を推進する予定である。 1.S =1/2異方的三角格子ハイゼンベルク模型の磁場中相図の解明。異方的三角格子ハイゼンベルク模型の磁場中基底状態、量子相転移をDMRGや厳密対角化法により明らかにする。パラメータ依存性を包括的に調べ、磁場中相図を求め、磁化プラトーなど特異な物性を示す相を発見する。 2. 磁化プラトー状態とトポロジカルな状態の関係性の解明。今年度の成果を発展させ、異方的三角格子ハイゼンベルク模型の磁化プラトー状態のベリー位相を解析することで、トポロジカルな状態と磁化プラトーの関連性を明らかにする。磁化曲線中の量子相転移をトポロジカル数で区別することで、磁化プラトー現象の統一的理解の確立を目指す。 3. 新規数値計算プログラム開発。二次元フラストレート量子スピン系の磁場中基底状態における大規模数値計算を行うためのプログラムを開発する。従来の計算法では到達不可能な大きなサイズでの量子スピン計算の実現を目指す。 4. 磁化プラトー状態と量子エンタングルメント状態の関係性の解明。磁化プラトー状態における量子エンタングルメントを、エンタングルメント・エントロピーや相互情報量を用いて調べ、量子エンタングルメントの構造を明らかにする。更に、外部磁場の空間揺らぎによるエンタングルメント構造の変化を明らかにし、量子情報や量子コンピュータへの応用につながる基礎理論の構築を目指す。
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Research Products
(2 results)