2017 Fiscal Year Annual Research Report
Comprehensive understanding about the surface processes of spin-polarized atoms
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17H02933
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Research Institution | Tokyo University of Agriculture and Technology |
Principal Investigator |
畠山 温 東京農工大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (70345073)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
臼井 博明 東京農工大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (60176667)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 原子・分子物理 / 量子エレクトロニクス / 表面・界面物性 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は,スピン緩和防止コーティング膜でスピン偏極原子が起こす過程の包括的理解のために有用であると考えている新たな2つの分光実験の準備を進めた。1つめは運動誘起磁気共鳴分光法である。この方法は,表面に空間周期的な磁場を作り,その磁場中で原子の速度に応じて起こる磁気共鳴分光を観測する方法である。その準備のために,パラフィンコーティング膜表面でルビジウム原子ビームが散乱されるようすを詳細に調べた。その結果,ルビジウム原子は表面の衝突でスピン緩和は起こさないものの,並進運動はほぼ完全に表面によって熱化されていることを明らかにできた。 2つめの分光が,コーティングと相互作用して広がりやシフトを起こしているはずの光吸収線の観測をめざす実験である。ただ,吸収は弱いと予想されるため,検討の結果,吸収を直接測るのではなく,光吸収によって起こるはずのスピン偏極の崩れを測定する方法を選択した。予想される吸収線の波長領域で波長を変えながら計測を続けているが,まだ検出にはいたっていない。 これらの実験と並行して,パラフィンコーティング膜表面でのアルカリ原子の光応答の研究として,堆積させたルビジウム原子を意図的に酸化させて,そこからの光誘起原子脱離を観測した。アルカリ原子はさまざまな表面において酸化物として存在している可能性が高く,この結果は,いろいろな条件で観測されるアルカリ原子の光誘起脱離現象に統一的な視点を与えられる可能性がある。 これらの研究に用いたパラフィンコーティング膜の分析と評価も進めた。特に,ルビジウム原子を照射すると特性が大きく変化している兆候をつかんだ。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
運動誘起磁気共鳴分光法に必要な原子のパラフィンコーティング散乱過程の測定が,原子からの発光が微小で検出が難しく,精度の高いデータをとるために時間がかかった。コーティング表面での原子の光吸収線の探索実験では,遷移が弱いせいか,まだ検出にいたっていない。
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Strategy for Future Research Activity |
2つの分光実験ともやや遅れているものの着実に前進できているので,今年度も引き続き研究を進めたい。一方で,当初の研究計画にあるような時間分解測定実験の準備を今年度は開始する予定である。光誘起原子脱離現象の研究もアルカリ酸化物に着目することにより大きな進展が見込まれることがわかったので,今後その視点から研究を進める。これらの研究に必要な膜の評価は引き続き行い,特に,アルカリ金属原子気体に暴露することによる特性変化の分析を進めたい。
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