2017 Fiscal Year Annual Research Report
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17H02940
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
小松崎 民樹 北海道大学, 電子科学研究所, 教授 (30270549)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 1分子計測(SMD) / エネルギー地形 / 反応ネットワーク / ラマン分光イメージング / 詳細釣合いの破れ |
Outline of Annual Research Achievements |
計測誤差、有限サンプルに由来する誤差に加えて、色素分子の退色キネティックスを考慮に入れて、1 分子蛍光共鳴エネルギー移動(FRET)時系列データから反応ネットワークおよびエネルギー地形を再構成する新しい解析手法を開発した。具体的には、情報理論における速度歪み理論に依拠する時系列解析手法を改良し、尤度関数を予め仮定しない累積和に基づく変化点解析、およびドナー・アクセプター色素分子の退色を表すノードを新たに導入し、色素分子の退色に依拠する見かけ上の構造遷移とそれ以外の実際の構造遷移を分類した。色素分子の退色の時間スケールが有意に異なる、アデニレートキネーゼの折り畳みの一分子FRET時系列データに適用し、状態数および状態間のネットワーク、エネルギー地形が変性剤および時間スケールとともにどう変化するかを明らかにすることに成功した。また、タンパク質の構造に依存して退色の時間スケールが異なることによる非平衡性を論じ、詳細釣合いの破れを定量する解析手法も併せて構築した。
ラマン画像は多くの情報を含んでいるが、生スペクトルの信号が弱く、計測誤差や蛍光の混入に対応するため、再帰的な多項式フィッティングや特異値分解のような前処理を必要とする。我々は、前処理に含まれる恣意性を最小限に抑えるため、ウェーブレット多重分解によりスペクトルの低周波数成分を除いた高周波成分がつくるスペクトル空間におけるクラスタリング手法(教師なし学習)を検討した。甲状腺濾胞癌細胞株(癌細胞)と濾胞上皮細胞株 (非癌細胞)の1細胞ラマン分子イメージングに適用した結果、すべての周波数成分を用いた場合に比べて、癌か否かの識別能が飛躍的に向上することを示唆する結果を得た。
この他、F1-ATPaseの非アレニウスキネティックスの数理モデリング研究、非リボゾーム合成酵素の1分子FRET観察に関する国際共同研究等を実施した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
1分子時系列解析理論の研究はJ.Chem.Phys.特集号(single molecule biophysics)へ招待されて寄稿し、Editor's Pickにも選出されて、高い評価を得るに至った。
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Strategy for Future Research Activity |
教師なし機会学習だけでなく、多角的に検証するためランダムフォーレストなどの(教師つき)アンサンブル学習なども適用し、得られた解析結果の妥当性を評価する。また、研究協力者の阪大藤田克昌准教授らとも密に連携を取りつつ、データの標準化を行い、より統計的な信頼性の向上を狙う。
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