2018 Fiscal Year Annual Research Report
Comprehensive understanding of the phospholipid flip mechanism in the endoplasmic reticulum and establishment of the control technology of biomembrane dynamics
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17H02941
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Research Institution | University of Toyama |
Principal Investigator |
中野 実 富山大学, 大学院医学薬学研究部(薬学), 教授 (70314226)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
池田 恵介 富山大学, 大学院医学薬学研究部(薬学), 准教授 (00553281)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | リン脂質 / フリップフロップ / 蛍光 / 中性子散乱 |
Outline of Annual Research Achievements |
重水素化脂質からなるベシクルと普通の脂質のベシクルを作成して、これらにモデルペプチドを組み込み、中性子散乱実験によりペプチドのリン脂質フリップフロップ誘起能を評価した。膜貫通配列依存的なフリップフロップが観測され、ペプチドの添加によりベシクルのリン脂質の動的特性を制御できることが明らかになった。また、中性子散乱法をリン脂質輸送タンパク質の系に適用し、リン脂質のベシクル間移動を定量的に評価することで、輸送活性の脂質組成依存性、膜曲率依存性を明らかにするとともに、輸送メカニズムを明らかにした。 上記のペプチドが細胞膜にどのような影響を及ぼすかを検討するため、細胞への添加実験を行った。初期にデザインしたペプチドは細胞毒性が高いことが判明し、これがペプチド末端に導入したリジン残基の繰り返し配列に起因すると考えられたため、その親水性配列を変更したところ、細胞毒性を低減させることに成功した。この成果によって、ペプチドによる細胞機能の制御とその評価を実施するための基盤が構築できた。 ホスホリパーゼDを用いたホスファチジル基転移反応によってベシクル二重層の外側の脂質を変換し、二重層の外と内で異なる脂質組成をもつ非対称ベシクルを作成した。条件の最適化によって、これまで困難であったホスファチジルエタノールアミン含有量の増加が可能となった。細胞膜の非対称性の重要性を議論する上で重要な、非対称膜を大量に調製することが可能となった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
中性子散乱実験では、モデルペプチドの活性評価を実施し、期待通りの成果を得ることができた。また、MDシミュレーションによってペプチド存在下の膜特性解析が進んでおり、実験結果を解釈・説明できるデータが揃ってきている。また、ペプチド添加が細胞膜の機能に与える影響を評価する実験系も構築できつつある。以上のことから、本研究課題はおおむね順調に進展していると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
当初の予定通り研究をすすめる。モデル膜系では、蛍光および中性子散乱を用いたスクランブラーゼ活性評価法を、二量化した膜貫通ヘリックスに適用して、ヘリックス会合が及ぼす影響を明らかにする予定である。細胞実験では、これまでのモデル膜実験で挙げたスクランブラーゼ候補タンパク質について、ノックダウン、ノックアウト実験を引き続き実施し、小胞体スクランブラーゼの解明を目指す。また、モデルペプチドを細胞に添加したときの細胞膜の脂質スクランブリング、細胞機能変化を観察し、ペプチドによって細胞機能を制御する技術の開発を目指す。さらに、これまでの研究によって、中性子散乱による評価法の確立、MDシミュレーションを組み合わせたペプチド存在下の膜特性の解析、非対称膜作成法の構築などの成果が得られたので、これらを応用した研究についても検討を始める。
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