2019 Fiscal Year Annual Research Report
Comprehensive understanding of the phospholipid flip mechanism in the endoplasmic reticulum and establishment of the control technology of biomembrane dynamics
Project/Area Number |
17H02941
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Research Institution | University of Toyama |
Principal Investigator |
中野 実 富山大学, 学術研究部薬学・和漢系, 教授 (70314226)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
池田 恵介 富山大学, 学術研究部薬学・和漢系, 准教授 (00553281)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | リン脂質 / フリップフロップ / 蛍光 / 中性子散乱 |
Outline of Annual Research Achievements |
蛍光脂質を用いたリン脂質フリップフロップ誘起能評価実験では、ペプチドの膜貫通配列中に2つの親水性アミノ酸(アルギニンとヒスチジン)を導入し、その位置、間隔、ペプチド全長を変えて評価を行い、2つの親水性残基がαヘリックスの同じ側に存在するときに誘起活性が高まることを見出した。また、MDシミュレーションにより、ペプチド近傍の脂質頭部がこれらの親水性残基と相互作用し、局所的に膜厚を減少させていることが明らかになった。これらの結果は、ハイインパクト誌であるJ. Phys. Chem. Lett.に掲載された。 中性子散乱法を用いたペプチドのリン脂質フリップフロップ誘起能評価実験では、膜貫通配列の片末端に様々な親水性アミノ酸を4残基導入したペプチドを用い、これまで用いてきたリジンを4残基導入したペプチド以外も同等のフリップフロップ活性を有することが明らかになった。 フリップフロップを誘起するペプチドの細胞への作用を明らかにするため、フローサイトメトリーによる細胞膜脂質(ホスファチジルセリン)の細胞膜外側への露出(スクランブラーゼ活性)の評価を行った。末端4残基および、膜貫通領域の親水性残基の種類によってスクランブラーゼ活性や細胞毒性が異なることが判明した。 中性子散乱法およびピレンエキシマー蛍光を利用したリン脂質の粒子間移動速度評価法をリン脂質輸送タンパク質の系に適用し、従来、脂質輸送活性がないとされていた相同タンパク質が、脂質組成に依存して輸送活性を発揮することを確認した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
リポソームを用いた実験、細胞実験ともに、計画通り進んでいる。ただし、細胞実験によるスクランブラーゼ活性評価では、ペプチド添加による活性が、アポトーシス時に見られるホスファチジルセリンの露出に比べ、その程度が低い結果が得られている。恐らくホスファチジルセリンを内側へ戻す酵素(フリッパーゼ)が機能しているためと考えられ、今後、その詳細を明らかにする必要がある。
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Strategy for Future Research Activity |
当初の予定通り研究を進める。ベシクルを用いた系で、膜貫通ペプチド、特にS-S結合により二量化したペプチドについて、活性が高い配列を見極め、そのペプチドの細胞に対する作用を、フローサイトメトリーにより評価する。また、MDシミュレーションにより、脂質のフリップフロップの自由エネルギー計算を実施し、ペプチドがフリップフロップの活性化エネルギーをどの程度低下させるかを計算し、実測との比較を行う。さらに、小胞体スクランブラーゼの解明を目指し、候補タンパク質のノックダウン実験と、その細胞のミクロソーム画分を用いたスクランブラーゼ活性評価を実施する。
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Research Products
(19 results)