2019 Fiscal Year Annual Research Report
浮遊微粒子で覆われた惑星大気大循環と物質循環の力学
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17H02960
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
山本 勝 九州大学, 応用力学研究所, 准教授 (10314551)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 地球流体力学 / 惑星大気 |
Outline of Annual Research Achievements |
これまで十分に議論されていなかった「自転が遅い天体や小さい天体における赤道波動の理論的考察」を行った.これらの天体では,球面の赤道ケルビン波の南北風成分が重要であることを示し,その波による輸送過程について議論した(Yamamoto 2019).球面の赤道ケルビン波に対応する波動は,定義や分散関係がベータ平面の赤道ケルビン波と全く同じではないが,本報告では「赤道ケルビン波」と表記する.今年度は,球面の赤道ケルビン波の位相構造と水平温度輸送のLambパラメーター依存性を議論した.土星の衛星のタイタンではLambパラメーターが小さく,赤道ケルビン波の南北風成分が無視できない.この南北風成分は,タイタン大気大循環モデルの赤道ケルビン波の水平構造でも見られる.また,鉛直伝播する赤道ケルビン波では,南北流成分と温度成分の位相が合うため,熱は赤道向きに輸送される.しかしながら,この解析で見積もられた赤道向き熱輸送は,金星中層大気大循環モデル(Yamamoto and Takahashi 2018)の赤道向き熱フラックス値よりも小さい.金星中層大気大循環モデルでは,赤道ケルビン波の振幅が高緯度で十分に減衰する前に中緯度ジェット付近で臨界緯度に達し,中高緯度のロスビー波と結合することで赤道向き熱および運動量輸送が強化されることが示唆される. 紫外線吸収物質高度分布に対する金星大気大循環の依存性も調査した.その吸収物質を高度57-65 km (LowUV分布)から高度57-70 km (High-UV分布)に変えると,雲頂付近のUV加熱域が鉛直に広がり,その加熱率極大値が小さくなる.これゆえ,High-UV実験では,雲層上端の東西風と子午面循環がLowUV実験よりも弱くなり,潮汐波の振幅および運動量フラックスも小さくなる.このように紫外線吸収物質の影響を議論する上で重要な知見を得ることができた.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
力学過程に関する研究成果やその途中経過を学会等で発表した (European Geosciences Union General Assembly 2019 ,International Venus Conference 2019, JpGU Meeting 2019; 2019年度日本気象学会秋季大会).ゆっくり自転する惑星の赤道ケルビン波に関する研究が学術雑誌に掲載された(Yamamoto 2019, Icarus, 322, 103-113).
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Strategy for Future Research Activity |
物理過程を理想化した惑星大気大循環モデルの結果を解析し,大気大循環の相似性のみならず,物理過程の相似性についても調査する.また,高解像モデルを用いた金星大気大循環実験の結果を解析し,角運動量輸送収支や波動(潮汐波と定在波)の解析を行う.力学研究と併行して,「対数正規モーメント法を用いた浮遊微粒子のパラメタリゼーション」を輸送モデルに導入する.
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