2017 Fiscal Year Annual Research Report
直接観測に基づく衝撃波電子加速の実証的理論モデルの確立
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17H02966
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
天野 孝伸 東京大学, 大学院理学系研究科(理学部), 准教授 (00514853)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
松清 修一 九州大学, 総合理工学研究院, 准教授 (00380709)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | プラズマ / 粒子加速 / 宇宙線 / 衝撃波 |
Outline of Annual Research Achievements |
(A) MMS衛星の観測データ解析 地球バウショックの観測イベントを選出し,電磁波動のイベント解析を行った.コヒーレントな高周波電磁波は衝撃波の遷移層内部において散発的な波束として観測され,その振幅は典型的に背景場の数%程度であった.また偏波解析を行うことにより,これらは右円偏波・磁力線平行伝播のホイッスラー波であることが確認された.複数衛星の観測データを用いて波形の比較を行ったところ,衛星間距離が20 km程度の時には衛星間で波形に対応関係があまり見られず,一方で衛星間距離が7 km程度になるとある程度の対応が見られることが分かった.このことは波束の空間スケールが数 km程度しかないことを意味する予想外の結果である. (B) 理論モデル構築 衝撃波遷移層における衝撃波ドリフト加速と呼ばれる古典的な電子加速メカニズムに波動によるピッチ角散乱の効果を考慮した統計的衝撃波ドリフト加速の理論を構築した.簡単のため空間依存性を無視しピッチ角等方性を仮定することにより,電子のエネルギースペクトルの特徴を解析的に求めることに成功した.すなわち,エネルギースペクトルはベキ型となり,そのベキ指数は加速領域における磁場勾配のみに依存すること,またベキ型スペクトルは高エネルギー領域においてカットオフを持ち,そのカットオフは電子の散乱効率にのみ依存することを示した. (C) 数値シミュレーション 比較的プラズマベータ(プラズマ圧と磁気圧の比)が高く,マッハ数が低い条件において2次元の粒子シミュレーションを行い,電子の加熱・加速について調べた.衝撃波遷移層において高周波のホイッスラー波が励起されていること,また被加速電子とホイッスラー波が相互作用していることが分かった.この粒子軌道は統計的衝撃波ドリフト加速の理論と整合しており,今後はより詳細に粒子軌道解析や波動の励起機構の解析を進める.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
全体として概ね順調に研究計画を進めることが出来ている.
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Strategy for Future Research Activity |
これまでに構築した理論モデルと観測データ,または数値シミュレーションとの比較を順次行っていく.観測では波動強度や高エネルギー電子フラックスのデータから散乱効率を評価することが可能であり,これを用いて理論との整合性を検討する.数値シミュレーションではより直接的に散乱効率の評価や波動の励起過程の同定を進める.また観測・シミュレーションとの比較に際して,必要に応じて理論モデルをより精密なものに改善していく予定である.
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Research Products
(13 results)