Research Project
堆積物中から回収する宇宙塵の同位体分析から,過去の大気酸素同位体比と生物生産量の変動を求めるため,平成29年度は,以下の3つの基礎研究を並行して行った.(1) 中・古生代の地球に付加した宇宙塵を取り出すために,兵庫県篠山地域に分布する丹波帯および岐阜県舟伏山地域二分布する美濃帯の石炭系~三畳系チャートの試料採取を行った.採取した試料については宇宙塵の分離・回収を行い,これまで報告されているもののうち,最古となる石炭紀の溶融宇宙塵を得ることができた.(2) 現在の海洋底に分布する深海底堆積物を対象にした溶融宇宙塵の回収を進めるため,これまでに掘削されたコア試料について文献調査を行った.検討は,主に放散虫を主体とした放散虫軟泥を含むコア試料の回収を目的として進めた.検討の結果,高知大学海洋コア研究センターに保管された3サイトの堆積物コア,およびテキサスA&M大学に保管された4サイトの堆積物コアを対象とすることで,現在から白亜紀前期までの放散虫軟泥および放散虫チャート試料を回収することが可能であることが明らかになった.(3) 南極とっつき岬の氷から回収した鉄質スフェルールについての表面と断面を,SEM/EDS,FE-EPMAを用いて観察・元素分析を行った.また選別した鉄質スフェルールおよび人工的に作成した鉄質スフェルールについて酸素同位体組成をSIMSを用いて測定した.その結果,先行研究においてみられたサイズと 酸素同位体比の相関は,本研究の試料においては確認されないことが示された.また人工的に作成した鉄質スフェルールの酸素同位体比はiron meteorite fusion crust と近い値であることが明らかになった.
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
本家研究計画の柱である宇宙塵の回収,同位体分析は,尾上,安川,中村がそれぞれ中心となって研究を進めることができた.堆積岩からの宇宙塵回収については尾上が研究を進め,本計画においても十分な数の試料を準備することができた.また,これまで新生代の海洋底堆積物試料を用いたた研究で実績がある安川は,宇宙塵の回収に適切な深海底堆積物試料の検討を進め,次年度以降に堆積物試料からも宇宙塵研究を進めることが出来るようになった.宇宙塵の同位体分析についても,隕石や宇宙塵試料の同位体分析をこれまで行ってきた中村がすすめることで,精度の高い分析を行うことができた.このように本研究では,当初予定していた研究計画のスケジュールに沿って研究をすすめることができており,研究の進捗状況はおおむね順調に進展していると言える.
堆積岩からの研究試料については,これまで検討を進めてきた丹波帯や美濃帯を対象に,前年度までに宇宙塵を回収できなかった層準付近から新たに試料採取を行う.特に石炭紀のチャート試料については,年代が詳しく決定されていないため,微化石や古地磁気層序用試料の採取も行う.太平洋の深海底堆積物については,高知大学海洋コア研究センターで試料採取を行う.今年度は,前年度に選定を済ませた必要な年代のコア試料について試料採取を申請し,保管された海洋掘削コアから試料採取を行う.採取した堆積岩・堆積物試料については,磁性分離を行い,鉄質の溶融宇宙塵回収を進める.回収された溶融宇宙塵については,前年度導入したSEM-EDSを用いて初期分析および宇宙塵候補の選別を行った後,EPMA等を用いた詳細な化学組成分析・鉱物組成分析を進める予定である.酸素同位体分析については,現在南極宇宙塵を対象に過去の大気酸素分圧を求める手法の開発を進めているが,過去の時代の溶融宇宙塵にこの手法が適応できないかについても検討を始める.以上の研究の過程で得られた成果は,積極的に国内外の学会で発表する予定である.
All 2018 2017
All Journal Article (13 results) (of which Int'l Joint Research: 3 results, Peer Reviewed: 13 results, Open Access: 2 results) Presentation (34 results) (of which Int'l Joint Research: 9 results)
Polar Science
Volume: 15 Pages: 29-38
10.1016/j.polar.2017.12.002
Paleontological Research
Volume: 22 Pages: 167-197
Science Reports of Niigata University (Geology)
Volume: 32 Pages: 29-69
Progress on Conodont Investigation, Cuadernos del Museo Geominero
Volume: 22 Pages: 265-268
地質学雑誌
Volume: 123 Pages: 163-178
International Geology Review
Volume: 59 Pages: 1-13
10.1080/00206814.2017.1379912
Scientific Reports
Volume: 7 Pages: 11304
10.1038/s41598-017-11470-z
Space Science Reviews
Volume: 208 Pages: 239-254
10.1007/s11214-017-0353-9
Volume: 208 Pages: 317-337
10.1007/s11214-017-0341-0
Geochimica et Cosmochimica Acta
Volume: 208 Pages: 119-144
10.1016/j.gca.2017.03.034
Volume: 208 Pages: 107-124
10.1007/s11214-016-0289-5
Volume: 214 Pages: 172-190
10.1016/j.gca.2017.06.047
Earth, Planets and Space
Volume: 69 Pages: 120
10.1186/s40623-017-0705-4