2018 Fiscal Year Annual Research Report
Internally consistent pressure scales at ultla-high pressure condition
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17H02985
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Research Institution | Ehime University |
Principal Investigator |
境 毅 愛媛大学, 地球深部ダイナミクス研究センター, 講師 (90451616)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 2段式ダイヤモンドアンビルセル / サブテラパスカル / マルチメガバール / 圧力スケール / 状態方程式 / 集束イオンビーム加工装置 / ナノ多結晶ダイヤモンド(NPD) / 超高圧発生 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、高圧科学において広く利用されている様々な圧力標準物質について、その有効適用範囲を500 GPa超の領域にまで拡張することを目的としている。具体的には、複数の圧力標準物質についてダイヤモンドアンビルセル(DAC)を用いた高圧発生実験を行い、粉末X線回折法により格子体積の収縮を測定することで、各物質の状態方程式(=圧力スケール)を決定し、圧力標準物質相互の整合性を確認する。平成30年度は、新たな圧力発生技術の開発による500 GPaの発生を目標として、2段式ダイヤモンドアンビルセルの実験と凸型ダイヤモンドアンビルによる実験を並行して行った。 前者(2段式)では、新たにコニカルサポート型マイクロアンビルの開発を進めた。この方式ではこれまで約400 GPaの圧力発生に成功している。これに対しコニカルサポート面の面積を2倍にした実験を行ったところ、加圧効率が悪く発生圧力約300 GPaで実験を中断したが、アンビルの破壊自体は見られなかった。後者(凸型)では、集束イオンビーム加工機を用いて前者と同様のアンビル形状を1段目アンビルのみで再現した実験を行い、白金と金について約350 GPaまでの圧縮実験に成功した。また別の実験ではアンビルの破壊が見られないものの、加圧効率の悪化に伴い加圧を中断した実験(~300 GPa)があった。反対に、アンビル先端部(凸部)をやや高くし、ガスケット材にレニウムと金の複合ガスケットを用いた実験では加圧効率を劇的に改善することに成功したが、周辺部の圧力に対して先端部のみが高圧力となったことで圧力勾配が大きくなりすぎてしまい250 GPaでアンビルの破壊が見られた。両者ともに加圧効率とアンビル先端部での圧力勾配の制御がキーパラメータとなっており、アンビル先端部形状やガスケット材を改良・最適化することで、さらなる高圧力発生が可能になると期待される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
これまでの研究で、レニウム(Re)と白金(Pt)、白金と金(Au)、酸化マグネシウム(MgO)と白金といった組み合わせで300 GPa領域での同時圧縮体積データは揃いつつある。一方、本研究課題で目標とする500 GPa領域での圧力スケールの検証のためには、圧力発生技術の向上が不可欠である。本年度は新たにコニカルサポート型の2段式ダイヤモンドアンビルと、凸型ダイヤモンドアンビルを開発し、圧力発生実験を行った。 2段式での実験では、2段目アンビルの素材として、Dubrovinskaia et al. (2016)で報告された素材と同等のラマンスペクトルを示す非常に細粒な粒径(<10 nm)のナノ多結晶ダイヤモンド(ultra-fine NPD)を新たに合成して用いた。これまで約400 GPaの発生実績のあるアンビル形状デザインを基に、コニカルサポート面積を2倍にした実験を行った。これにより1段目アンビルへの負担を軽減し、1段目アンビルが先に割れるという問題を克服できたが、一方で荷重及び周辺圧力(封圧)に対する加圧効率が問題となることが分かった。これに対し、同様の形状を単結晶ダイヤモンドアンビルで再現した凸型ダイヤモンドアンビルでの実験を並行して行い比較することでultra-fine NPDのアンビル素材としての優位性およびコニカルサポート方式の優位性を検証することを試みた。現時点においては最高到達圧力において両者に大きな差異は見られていないが、凸型においても同様に加圧効率が問題になること、加圧効率を重視したアンビルデザインにすると周囲との圧力差(圧力勾配)が大きくなりすぎることでアンビル先端部のみが壊れてしまうことが分かった。今後さらにアンビル形状の最適化をすすめ、400 GPa超の圧力領域で2つの方式で到達圧力の違いが現れるかどうかを検証する。
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Strategy for Future Research Activity |
圧力発生技術に関して、2018年はダイヤモンドアンビルの先端部を集束イオンビーム加工機で加工したトロイダル型アンビルによる400~600 GPaの圧力発生の報告が相次いだ(Dewaele et al., 2018; Jenei et al., 2018)。これに対し我々は2段式ダイヤモンドアンビルのノウハウに基づき独自に凸型ダイヤモンドアンビルを開発したが、これら凸型とトロイダル型は非常に似通っている。トロイダル型では500 GPa超の圧力発生を報告しているものの、Dewaele et al. (2018)は500 GPaを超えた実験はただ1回のみであり再現性に乏しく、またJenei et al. (2018)の600 GPaの報告も圧力スケールの選択による違いであって、実質的な圧縮状態としては本研究と同等(~400 GPa)である。このように400-500 GPa領域での圧力発生技術および圧力スケールはまだまだ発展途上である。一方で近年では、動的圧縮実験のグループより衝撃波のたたないランプ圧縮技術に基づいた銅(Cu)の450 GPaまでの1次圧力スケールの報告があった。こういった動的圧縮に基づくデータと、我々の静的圧縮技術に基づく等温(常温)データとを比較して数100 GPa領域での圧力スケールの整合性を確認することは非常に重要である。今後は、2段式ダイヤモンドアンビルセルおよび凸型ダイヤモンドアンビル実験による400~500 GPa領域の圧力発生技術の開発を継続すると同時に、300 GPaを超える領域でのCuやMgO等の圧力スケールの整合性に関する検証を進める。
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[Presentation] ナノ多結晶ダイヤモンドの圧縮挙動2018
Author(s)
入舩徹男, 上田千晶, 境毅, 國本健広, 有本岳史, 新名亨, 門林宏和, 大藤弘明, 八木健彦, 河口沙織, 河口彰吾
Organizer
第59回高圧討論会
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[Presentation] 水素の金属化に向けた2段式ダイヤモンドアンビルセルの最適化Ⅱ2018
Author(s)
武田良介, 濱谷俊希, 中本有紀, 坂田雅文, 清水克哉, 境毅, 入舩徹男, 八木健彦, 河口沙織, 平尾直久, 大石泰生
Organizer
第59回高圧討論会
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