2017 Fiscal Year Annual Research Report
有機分子の起源・生成機構解明のための同位体解剖学的手法の深化
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17H02989
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
山田 桂太 東京工業大学, 物質理工学院, 准教授 (70323780)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
中川 麻悠子 東京工業大学, 地球生命研究所, 研究員 (20647664)
ジルベルト アレキシー 東京工業大学, 理学院, 助教 (20726955)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 部位別同位体分析 / 揮発性有機化合物 / エタノール / アミノ酸 / イソバリン |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、地球宇宙化学試料に存在する微量有機分子の位置別炭素・水素安定同位体分析法(炭素PSIAおよび水素PSIA)を確立し、いくつかの実際試料に適用することで、地球宇宙化学的研究における有機分子の起源・生成機構の議論を進展させることを目的としている。本年度までに、大気中の揮発性有機化合物および隕石中アミノ酸を想定した極微量有機分子の炭素PSIAおよび水素PSIAの開発を進めた。 大気中揮発性有機化合物については、エタノールに着目し、これまで申請者らが確立している炭素PSIAに加え、新たに水素PSIAの確立を行った。具体的には、重水素でソフトラベル化したエタノールを用いて0.1%程度の水溶液試料を準備し、マイクロ固相抽出法にて部位別同位体分析装置に導入し、熱分解温度、水素同位体交換の有無等を検証した。その結果、熱分解時に水素同位体交換が起きており、熱分解の温度や通過速度の調節では、交換を抑えることができないことが分かったが、交換率は一定であり、補正が可能であることが分かった。最終的には、同位体補正直線を用いて水素PSIAを行う方法を確立した。 隕石中有機化合物については、特にアミノ酸の1種であるイソバリンに着目し、カルボキシル基の炭素PSIAの確立を行った。数ミリグラムのイソバリンを用いニンヒドリン反応を用いて、カルボキシル基炭素を二酸化炭素として取り出し同位体分析装置に導入、計測を行った。その結果、ニンヒドリン反応が100%進行しないことに加え、30‰程度の大きな同位体分別が伴うことが明らかになった。そこで、封緘したガラス管内で長時間反応を行うことで、100%の反応率を達成し、炭素PSIAを可能とした。 今後は、実際試料の適用に向けた、試料量の低減および装置への導入法を確立する必要がある。大気中揮発性有機化合物分析および隕石中アミノ酸分析のための、試料導入ラインを作成した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
部位別同位体測定法の開発については、ほぼ予定通りに進んでいるが、実試料への適用に遅れがある。これは、同位体比質量分析計の故障のため、同位体分析が行えない時期があったためである。本研究に使用するための装置を2台準備していたが、2台ともに故障が起こり、1台は現在も調整中である。
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Strategy for Future Research Activity |
ここまでに開発済みの炭素PSIAおよび水素PSIAの実際試料への適用を進める。具体的には、はじめに試料量の低減および装置への導入法を確立し、次に実際試料を分析する。大気中揮発性有機化合物については、汚染都市域での試料採取および分析をおこなう。都市域大気中の、エタノール、アセトン、アセトアルデヒドを分析し、生体(植物、土壌)由来と工業由来の定量的区別を行う。隕石中アミノ酸については、隕石試料を扱うのではなく実験室模擬実験で合成分解したアミノ酸に適用し、反応経路と同位体分布の関係を明らかにする。
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Research Products
(5 results)