2019 Fiscal Year Annual Research Report
Pioneering gigabar science
Project/Area Number |
17H02996
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
重森 啓介 大阪大学, レーザー科学研究所, 教授 (50335395)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
境家 達弘 大阪大学, 理学研究科, 助教 (60452421)
尾崎 典雅 大阪大学, 工学研究科, 准教授 (70432515)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 高圧力 / 高速電子 / ナノワイヤー / レーザープラズマ不安定性 / X線自由電子レーザー |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は超高圧発生に関する研究として,引き続き①ナノ秒レーザー照射による高速電子を積極利用した高圧力発生,②ナノワイヤーアレイ構造試料を用いた高圧力発生に関して実施した. ①の高速電子駆動の超高圧力発生に関しては,当初は予定していなかった反射(散乱)光のスペクトル計測を取り入れ,高速電子の発生メカニズムであるレーザープラズマ不安定性による効果をより詳細に得ることに成功した.本研究における照射強度(約1000 TW/cm^2)の領域では誘導ラマン散乱による高速電子が支配的であるが,計測結果より入射レーザー波長からレッドシフトした反射光を明瞭に観測し,発生する高速電子のスペクトルの推定が可能となった.これを既存の高速電子計測と組み合わせることにより,より詳細な解析が可能となった.また,欧州との共同研究により,フランスのLaser Megajoule装置を用いた実験を開始し,まずは高速電子発生のキャラクタリゼーションを中心とした計測を行った(本年度以降も継続実施予定). ②のナノワイヤー構造試料と超高強度レーザーを用いた超高圧発生に関しては,引き続き理研播磨のSACLAおよび付帯の超高強度レーザーシステムによる実験を行い,ナノワイヤーの平均密度を改良するなど,照射実験条件の最適化を実施した.これまでの結果の解析から,ナノワイヤー構造試料を用いることによって約0.37 Gbar相当の超高圧力状態の発生を確認した.また,大阪大学レーザー科学研究所のLFEXレーザーを使用し,ピコ秒キロジュール条件でのナノワイヤー試料の照射実験を行い,高速電子や硬X線発生量の増大を確認した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
今年度は2種類のアプローチによるギガバール生成と特性評価に関する研究をすすめ,順調に成果を挙げつつある. ①の高速電子駆動の超高圧力発生に関しては,当初は予定していなかった反射(散乱)光のスペクトル計測を取り入れ,高速電子の発生メカニズムであるレーザープラズマ不安定性による効果をより詳細に得ることに成功した.本研究における照射強度(約1000 TW/cm^2)の領域では誘導ラマン散乱による高速電子が支配的であるが,計測結果より入射レーザー波長からレッドシフトした反射光を明瞭に観測し,発生する高速電子のスペクトルの推定が可能となった.これを既存の高速電子計測と組み合わせることにより,より詳細な解析が可能となった. ②のナノワイヤー構造試料と超高強度レーザーを用いた超高圧発生に関しては,引き続き理研播磨のSACLAおよび付帯の超高強度レーザーシステムによる実験を行い,照射試料の改良などを進めている.これまでの結果より,ナノワイヤー構造試料を用いることによって約0.37 Gbar相当の超高圧力状態の発生を確認し,今後はより高圧力の発生に向けた改良を実施する.また,当初の計画には無かったピコ秒・キロジュールレーザー装置による照射実験を行い,高速電子やX線の発生量の顕著な増大を観測した.詳細な解析を今後実施する予定である.
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Strategy for Future Research Activity |
本研究課題は2020年度が最終年度であり,これまでの集大成としての研究のまとめを行うだけでなく,次の展開に接続するための項目を実施する. ギガバール圧力の応用例として,まず挙げられるのが慣性核融合プラズマであり,本研究課題で実施している高速電子を用いた圧力発生の高効率化は「Shock Ignition」方式で極めて重要な位置を占める.このShock Ignition方式ではレーザープラズマ不安定性にとって発生する高速電子に着目することから,このレーザープラズマ不安定性の理解に資する実験的観測を基にした展開をすすめる.具体的にはレーザープラズマ不安定の特性評価のため,照射レーザー光の反射(散乱)計測を実施し,反射(散乱)光のスペクトル計測を行うことにより,誘導ラマン散乱や2プラズマ崩壊による高速電子の発生やプラズマのスケール長等の依存性に関する情報を取得し,PICシミュレーションコード等との比較を行う.いくつかの典型的なデータを取得することにより,超高圧力の発生そのものに加えて制御性を見据えた方向付けを行う. ナノワイヤーアレイ構造試料と超高強度レーザーを用いた超高圧力発生法に関しては,これまでフェムト秒レーザーとX線自由電子レーザーを用いて実施した結果を踏まえ,この手法の応用を見据えた展開を実施する.すなわち照射レーザーの吸収率増大により得られる効果(高速電子やX線発生量の増加など)を軸に,2次元シミュレーションコードを通した解析を実施する.上記実験のほか,ピコ秒キロジュールレーザーを用いたデータ取得も昨年度末に実施しており,これらの解析を含めた作業を今年度行う予定である.
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Research Products
(14 results)