2018 Fiscal Year Annual Research Report
Three-dimensional investigation of hierarchical chirality in various scales: general dichroism spectroscopic imaging
Project/Area Number |
17H03014
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Research Institution | Institute for Molecular Science |
Principal Investigator |
成島 哲也 分子科学研究所, メゾスコピック計測研究センター, 助教 (50447314)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | キラリティ / 偏光 / 表面・界面物性 / 近接場光学 / プローブ顕微鏡 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では,サブナノからマイクロメータまでのそれぞれのスケールの階層における,物質のキラルな構造の3次元分析を実現する。独自の光学活性検出法をベースに,ベクトルビームなど円偏光以外の偏光状態も用い,汎用な偏光二色性分析を行う。複数のスケール階層からのキラリティに関する情報は,分子レベルより大域的な構造に起因し発現する特性を理解するための新しい視点を与え得る。具体的な研究項目は以下の3つである。 ①分子とその集合体に対する紫外-可視-近赤外波長領域での円二色性(CD)顕微手法の構築 ②円偏光以外の偏光状態を利用した3次元キラル分析の実現と標準キラル物質の提供 ③分子スケールのキラル構造の分析を実現するプローブ顕微手法の開発 研究期間初年度の平成29年度は,CD顕微手法における励起光の波長範囲の拡張,および,正立型の顕微鏡に原子間力顕微鏡を組み合わせ,キラル構造の分析を可能とするプローブ顕微手法を実現するためシステム構築を進めた。 平成30年度は,平成29年度に導入予定だった高速ロックインアンプを導入し,光源系と検出系の開発を中心に行う予定で進めてきたが,途中研究代表者の不測の病気により,眼を使った長時間の作業が困難となったため,一時研究を中断した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
今年度は,検出系と光源系の開発を進めることにより,分析できる物質のキラルな構造を拡張することを計画していた。 まず,10 mm もの巨大な試料全体の観察に対応できるよう,検出系の一部である試料走査方式を見直した。 これまで開発してきた独自の光学活性分析システムでは,閉ループ方式のピエゾステージを用いることにより,ナノスケールの空間分解能を実現してきた。そのため,観察できる試料の大きさが最大でも,0.1mm 程度までに限定されていた。今回,ボイスコイル方式のアクチュエータに精密スケールを導入した閉ループ試料走査ステージを開発することにより,ナノスケールの空間分解能を維持しつつ,10 mm程度の生体組織の分析も可能になった。 我々が独自の光学活性検出で用いている円偏光変調法では,左・右の円偏光のみを離散的に繰り返し照射する(離散円偏光変調法)。これにより,ロックイン検出の高い感度を確保しつつ,多少タイミングがずれても直線偏光成分を一切含むことがないため,常にCD計測の信頼性が保証される。しかし,現在の離散円偏光変調法は,機械式の光チョッパーにより左・右の円偏光を交互に照射するため,変調周波数の原理的な上限が1 kHz程度に制限される。また,高い感度を得るため試料上の一点でCD信号を計測し,それを2次元走査することによりCD像を構築しているため,1枚のイメージ取得時間が20分から1時間ととても長い。生体の活動を司る物質の動態を解明するには,リアルタイムで観察・分析することが重要だが,現状では計測速度がかなり不足している。この問題を解消するため,高い繰り返し周波数をもつパルスレーザーを利用し,従来とは桁違いに高速な円偏光変調法の開発を進めてきたところ,途中研究代表者の不測の病気により,眼を使った長時間の作業が困難となったため,一時研究を中断し,一部計画を次年度に延期した。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度は高速ロックインアンプの導入を行い光源系と検出系の開発と円偏光以外の偏光状態を発生する手法を確立させる予定であった。高速ロックインアンプについては予定通り調達したが,光源や検出系に関する開発を進めている中で,研究代表者の突発的な病気により研究開発の延期が避けられなくなった。次年度は,まず,この部分についての方法論の確立を進める。 光学活性のイメージング分析により,試料のキラリティに関する局所的な情報を抽出され,その局所的なCD信号に寄与する部位や構造は,吸収波長から,概ね識別される。より正確にピンポイントでキラリティに関わる部位や構造を特定するため,現在,蛍光標識の利用を試行する。また,円偏光以外の偏光状態を用いた分析も進め,物質の構造とキラリティの分析を進める。
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Research Products
(16 results)