2018 Fiscal Year Annual Research Report
Synthesis, Characterization, and Reaction of Hypervalent Organochlorine(III) Compounds
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17H03017
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
宮本 和範 東京大学, 大学院薬学系研究科(薬学部), 准教授 (40403696)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 超原子価 / 塩素 / アリール / カチオン / ビニル / 求核置換反応 |
Outline of Annual Research Achievements |
超原子価ヨウ素化合物は、高い反応性と安全性が両立する優れた反応剤であるため、現代有機化学において頻用されている。一方、同族の超原子価臭素および塩素化合物は、遥かに高い反応性を示すことが予期されつつも、実用的な合成法が無く、有機合成化学への応用は皆無であった。最近 15 年間のあいだに我々は、種々の三価の超原子価臭素化合物の合成に成功し、それらがヨウ素類縁体とは全く異なる特異な反応特性を示すことを解明してきた。本研究では、より合成が困難な三価の超原子価塩素化合物の高効率な合成法を開発し、その反応特性を明らかにすることを目的に検討を行ってきた。 種々検討の結果、前年度安定的に供給可能になった三価のジアリールクロランを用いて種々の求核試剤のアリール化を精力的に実施し、それらが極めて優れたアリール化能を有することを見出した。また、従来未知のハロアレーンやヨウ化ビニルのハロゲン原子選択的アリール化反応を見出すことに成功した。 また最近、塩化ビニルから誘導される三価のビニル(アリール)クロランの非常にユニークな、単純アレーンによるビニル位でのSN2型求核置換反応を見出しつつある。同様の反応は同族の臭素、ヨウ素類縁体では困難であるため、三価の塩素の高い反応性によってはじめて実現した反応と考えられる。また本反応剤は、ほとんど求核性の無い超強酸の対イオンであるOTfイオンなどとも反応することから、これまで知られているビニル化合物のなかで最も反応性に富むと考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
昨年度発見した新しい三価のジアリールクロランの合成法を更に検討し、グラムスケールでも高収率で目的物を得られる条件を見出すことに成功した。またアリール化剤としての反応性を広く明らかにすることができた。本研究内容はまた国際的に高く評価され、アメリカ化学会誌(Journal of the American Chemical Society)に受理された。概ね計画どおり順調に推移していると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
最近開発した三価のビニルクロランはビニル化剤として特異な反応性を示すことを明らかにしつつある。安定に単離された初の三価の塩素化合物であるが、そのビニル化剤としての応用や、不安定活性種(カチオン、カルベン、ラジカル)の発生源としての性質について広く精査する。 今年度は更に困難が予想される三価のアルキニル塩素化合物(アルキニルクロラン)の合成にも挑戦している。この合成が実現すれば、これまで発生が困難だったアルキニルカチオンの性質を精査することが可能になると期待できる。 また、実用的観点から重要性が期待される、蛍光性色素など機能性分子のアリール化、ビニル化反応についても広く調べたい。
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Research Products
(15 results)