2017 Fiscal Year Annual Research Report
ホウ素化合物による新芳香環構築反応の機構解明と機能材料開発
Project/Area Number |
17H03020
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
庄子 良晃 東京工業大学, 科学技術創成研究院, 准教授 (40525573)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | π共役分子 / π共役高分子 / ホウ素 / ボラフルオレン |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、最近研究代表者らにより見出された、9-ボラフルオレン誘導体を用いたアルキンの効率的な芳香環化反応(Nature Commun. 2016)を利用し、クロスカップリング反応のみでは合成が困難な、多彩かつ特徴ある3次元骨格や湾曲・拡張構造を有するπ電子系分子・高分子群を創製し、電気伝導・発酵・熱伝導・物質輸送/透過ならびに動的特性に焦点を当て、新たな機能を探求することを目的としている。また、未だ明確な答えを出せていないこの新反応のメカニズムを解明し、ホウ素化合物が関与する有機反応に新たな展開を招くことを目指している。 平成29年度は、この新反応を剛直な一次元π共役高分子であるポリ(フェニレンエチニレン)に適用したところ、定量的なアルキン部位の芳香環化反応が進行し、ジグザグ型のπ共役ポリマーがワンポットで得られることを見出した。さらに、用いるボラフルオレンおよびポリ(フェニレンエチニレン)の置換基を検討したところ、両者に嵩高い置換基を導入することで、得られるジグザグポリマーが比表面積SBET = 366 m2 g-1 に達するミクロ多孔性を示すことを見出した。また、この多孔性を保ったまま、ジクザグポリマーの官能基変換を行うことにも成功した。なお、ポリ(フェニレンエチニレン)自体はミクロ多孔性を示さない。今回の成果は、これまで膨大な種類の誘導体が報告されているポリ(フェニレンエチニレン)が、ミクロ多孔性高分子の原料として有望であることを示している。 加えて、反応機構の検討において、9-ボラフルオレンの電子線パルスラジオリシスによって、脱ホウ素化/炭素-炭素カップリング反応が進行することを見出した。また、時間分解吸収スペクトル測定によって、9-ボラフルオレンの一電子酸化後に、複数の過渡種の生成を経て芳香環が形成されていることを明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度は、9-ボラフルオレンを用いたアルキンの芳香環化反応が、含アルキンπ共役ポリマーにも適用可能であることを明らかにし、さらに、得られた特徴ある3次元構造をもつジグザグポリマーが、原料ポリマーでは発現しないミクロ多孔性を示すことを明らかにした。さらに、この新規芳香環化反応のメカニズムを明らかにするための、重要な実験的手がかりを得ることができた。以上の理由から、本研究は「おおむね順調に進展している」と判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、これまでに引き続き、新規芳香環化反応を利用した特徴あるπ共役分子・高分子群を創製し、新たなπ電子系機能化学を展開する。具体的には、立体構造やコンホメーション挙動までも含めた、π共役分子の設計・合成指針を開拓する。さらに、これまで実施した時間分解測定に加えて、理論化学計算も駆使し、新規芳香環化反応のメカニズムを明らかにするための検討を実施する。
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Research Products
(10 results)