2018 Fiscal Year Annual Research Report
高原子価金属錯体の酸化反応特性と基質酸化反応機構制御要因の解明
Project/Area Number |
17H03027
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
小島 隆彦 筑波大学, 数理物質系, 教授 (20264012)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | ルテニウム錯体 / 酸化反応機構 / 反応速度論 / 高原子価状態 / 触媒・化学プロセス |
Outline of Annual Research Achievements |
1.新規六配位ルテニウム(IV)-オキソ(Ru(IV)=O)錯体及び既報のRu(IV)=O錯体を合成し、それら2つのオキソ錯体の結晶構造を決定した。それらの錯体について、トリフルオロ酢酸(TFA)存在下における、各種電子供与体からRu(IV)=O錯体へのプロトン共役電子移動(PCET)における再配列エネルギーを、マーカス理論に基づいて1.26eV及び1.20 eVと決定した。その結果、それぞれの錯体の電子移動(ET)の再配列エネルギー(1.70 eV及び1.88 eV)に比べて小さな値であることが明らかとなった。この結果は、Fe(IV)=O錯体において、ETとPCETにおける再配列エネルギーが殆ど変わらない、という報告例とは異なっており、Ru(IV)=O錯体の電子移動反応性の特異性を示している。これらの成果については、現在論文投稿中である。 2.水素結合部位としてアミドN-Hを導入した5座ピリジルアミン配位子を有するルテニウム(II)-アクア錯体を合成し、そのキャラクタリゼーションとそのアミド酸素の配位平衡について熱力学的解析を行った。さらに、その錯体のPCET酸化によって生成するRu(III)-ヒドロキソ錯体の合成と結晶構造解析、及びPCET酸化によるRu(IV)=O錯体の生成とキャラクタリゼーションを行った。そのRu(IV)=O錯体の水溶液中での有機化合物に対する酸化反応性の検討を行った。そのRu(IV)=O錯体は、C-H酸素化反応には反応性を示さなかったが、シクロヘキセンのエポキシ化を進行させ、生成物としてシクロヘキサンジオール、開環生成物であるアジポアルデヒド及びアジピン酸を触媒的に与えることがわかった。この反応では、オキソ配位子へのアミドN-Hプロトンの水素結合が、オキソ錯体のC=C2重結合への求電子的反応性を向上させていることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
1.最近、Cr(V)-オキソ、Fe(IV)-オキソ、Ru(IV)-オキソ錯体の電子移動の再配列エネルギーと、C-H結合酸化の遷移状態に関するBell-Evans-Polanyiの式の係数との間の直線的相関関係を初めて見いだした。これをさらに一般化して、金属-オキソ錯体の電子移動特性とC-H酸化反応の遷移状態制御が、どのように相関しているのかを明らかにするための研究を行っている。 2.Ru(IV)=O錯体によるアセトニトリル中でのC-H酸化反応について、プロトン存在下の酸化反応速度を検証した。Ru(IV)=O錯体の還元電位は、TFA濃度の上昇に伴って上昇した。酸化電位が低い3,4,5-トリメトキシベンジルアルコール(TMBA)を基質とした場合、プロトン濃度の上昇に伴い、Ru(IV)=O錯体のRu(II)錯体への見かけの還元反応速度定数は直線的に上昇し、1プロトン(TFA一分子)が関与していることがわかった。一方、酸化電位が高いベンジルアルコールを基質とした場合。その見かけの速度定数は、TFAの濃度によらず一定であった。さらに、TMBAを基質とした場合の反応速度定数は、2電子2プロトンのPCETにおけるマーカス曲線に一致して変化した。このことは、1プロトンが相互作用したRu(IV)=O錯体に、TMBAがPCET酸化されることを示唆している。
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Strategy for Future Research Activity |
1.金属-オキソ錯体の電子移動の再配列エネルギーとC-H酸化反応における遷移状態制御の関係性を明らかにするため、2種類のMn(IV)=O錯体の電子移動における再配列エネルギーを決定するとともに、C-H酸化反応の速度論的解析を行って、Bell-Evans-Polanyi式の係数を決定する。それらの2つのパラメータの相関が、これまでに得られた直線的相関関係と一致するかを検証する。さらに、この直線的相関関係に関する考察と意義づけを行い、論文として発表する。 2.ほとんど報告例のない、Ru(V)-オキソ(Ru(V)=O)錯体の合成とキャラクタリゼーション、及びその有機化合物の酸化反応における反応性と反応機構を明らかにする。Ru(V)状態を安定化するために、配位子として、アニオン性3座配位子である酸化耐性の高い環状無機物であるシクロトリフォスフェート(P3O9(3-))、及び置換基による電子的効果を検討しうる2,2’-ビピリジン(bpy)を2座配位子として用いる。Ru(V)=O錯体の合成は、有機溶媒中でのRu(III)-メトキソ前駆体錯体とメタクロロ過安息香酸などの過酸化物との反応により行う。合成したRu(V)=O錯体については、X線結晶構造解析、各種分光学的手法によりキャラクタリゼーションを行う。有機基質の酸化反応については、C-H酸化及びオレフィンのC=C結合酸化を主眼とする。
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Remarks |
(2)は2018年8月4日~5日に、ICCC2018 Post Conference in Tsukuba: International Symposium on Recent Advances in Bioinspired Molecular Catalysis(国際会議)を開催した際のURL。
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[Journal Article] Intermediate-Spin Iron(III) Complexes Having a Redox-Noninnocent Macrocyclic Tetraamido Ligand2018
Author(s)
Takahiko Kojima, Fumiya Ogishima, Takahisa Nishibu, Hiroaki Kotani, Tomoya Ishizuka, Toshihiro Okajima, Shunsuke Nozawa, Yoshihito Shiota, Kazunari Yoshizawa, Hiroyoshi Ohtsu, Masaki Kawano, Takuya Shiga, Hiroki Oshio
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Journal Title
Inorganic Chemistry
Volume: 57
Pages: 9683-9695
DOI
Peer Reviewed
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