2018 Fiscal Year Annual Research Report
Ambient pressure-induction of high pressure organic synthesis with in-pore super high pressure effect
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17H03039
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Research Institution | Shinshu University |
Principal Investigator |
金子 克美 信州大学, 先鋭領域融合研究群環境・エネルギー材料科学研究所, 特別特任教授 (20009608)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
服部 義之 信州大学, 学術研究院繊維学系, 准教授 (20456495)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 細孔場超高圧効果 / ナノ細孔 / 高圧有機合成反応 / 単層カーボンナノチューブ / 赤外分法法 / 物理触媒作用 |
Outline of Annual Research Achievements |
細孔場超高圧効果を検討するため、1,2-シクロヘキサンジオールに着目した。1,2-シクロヘキサンジオールは、触媒を用いない場合、1,2-エポキシシクロヘキサンを1 Gaの高圧下で水と反応させなければならない。結晶性のよいSWCNT細孔内の超高圧効果を利用して無触媒、常圧下での1,2-シクロヘキサンジオールの合成および、その反応時間依存性を赤外分光法によって検討した。 ナノ細孔カーボンにはSWCNT (eDips MEIJYO) を用いた。また、単層カーボンナノチューブの構造キャラクタリゼーションを綿密に進めた。ナノダイヤモンドなど他のナノ細孔性カーボンの研究も進めた。 1,2-シクロヘキサンジオールの合成は、SWCNTを真空加熱乾燥させた後、1,2-エポキシシクロヘキサン反応溶液を真空含浸させて60℃で24時間まで加熱還流した。 24時間加熱還流後のSWCNTのATRスペクトルの結果から1,2-シクロヘキサンジオールの生成が確認され、856、928、1043、3356 cm-1付近のピークからtrans体が生成したといえる。真空含浸後 (0 h) は反応物の1,2-エポキシシクロヘキサンのピーク (2983、779、837、964 cm-1) が確認できた。 反応1時間後では2983 cm-1付近の1,2-エポキシシクロヘキサンのピークに加え、1065、1043cm-1 にピークが見られ、1,2-シクロヘキサンジオールの生成が確認できた。さらに反応を進めると2時間以上で2983 cm-1付近の1,2-エポキシシクロヘキサンのピークは小さくなり、他方1065、1043cm-1 の二つのピークは反応時間とともに増大した。この結果からSWCNT細孔内中で無触媒、常圧で1,2-シクロヘキサンジオールの合成過程を実証できた。この実験結果は理論計算の結果にも対応する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
既に単層カーボンナノチューブ中でのフタロシアニン結晶の生成は前年度に確認できた。重要な残っている課題はナノ細孔内での反応機構の理解である。フタロシアニンの場合には赤外分光法の適用に困難があったために、報告のように,無色の1,2-エポキシシクロヘキサンの反応を選んで、反応の詳細をその場赤外分光法で検討することができた。その結果、バルクでは生成が困難なトランス体が単層カーボンナノチューブ内で生成するために、高圧をかけずとも細孔内で所定の反応が進行することが理解できた。また、アメリカの共同研究者が実施した反応中間体の安定状態の予測結果と、その場赤外分光の結果がよく対応していた。この結果から大まかにみれば予定通りの進行状態である。しかし、赤外分光法の補助的知見が得られるその場ラマン分光法を進めることにより、一層確実な反応解析ができるレベルに達したと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
無色の1,2-エポキシシクロヘキサンの反応を選んで、反応の詳細をその場赤外分光法で検討することができた。ただし、この実験は反応時間変化を追跡した結果である。反応中間体の解析を更に進めるには、反応の温度変化をその場赤外分光法で進めてゆく必要がある。幸い温度変化可能な赤外セルが平成30年度製作できたので、その実験研究を進める予定である。更に、赤外分光法からの知見をより確実にするうえで、その場ラマン分光法の検討を進める予定である。できれば銅フタロシアニン系についての知見がえられると、ほぼ予定通りの研究を完了することができる。
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