2017 Fiscal Year Annual Research Report
Study of hopping-like diffusion behavior of metal ions at ionic liquid/electrode interface
Project/Area Number |
17H03041
|
Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
今西 哲士 大阪大学, 基礎工学研究科, 准教授 (60304036)
|
Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
|
Keywords | イオン液体 / 拡散 / ホッピング / 電極 / 金属イオン |
Outline of Annual Research Achievements |
Ag+およびAu3+をイオン液体BMI-TFSAに溶かし、これらの拡散挙動をクロノアンペロメトリーおよび、走査型電気化学XPS(Scanning EC-XPS)を用いて調べた。その結果、Au3+の場合、Ag+に比較して極端に広い欠乏層領域が観察され、Hopping拡散挙動がより支配的であることが分かった。次に、これらの溶液に不活性イオンであるLi+を添加し、ホッピングサイトであるホールの濃度を制御して、拡散挙動の変化を観察した。その結果、どちらの場合もLi+がホールを埋めることにより、実効ホール濃度が減少し、ホッピング拡散挙動が抑制される様子が観察された。一方で、この抑制効果に関しては、Ag+イオン溶液の場合の方がAu3+イオン溶液に比べてはるかに大きいことが分かった。このことは、添加したLi+イオンが、拡散金属種であるAg+, Au3+と相互作用をしており、これがLi+イオン、あるいは拡散金属イオンの挙動に大きく影響を及ぼしていることを示している。 また、これらの拡散挙動の違いが電極表面上に形成される電析物の形状にどのように影響するかを調べた。Li+添加前は、どちらの溶液もデンドライト状の電析物が確認されたが、Li+添加後、Agでは粒状の電析物へ変化したのに対して、Auではほとんど形状が変わらなかった。これは、Agの場合、ホッピング拡散が大きく抑制されたことにより、全体の拡散係数が低下し、運動論的支配から熱力学的支配へと変わったことが原因であると考えられる。これらの結果は、これまで制御が難しかった電極近傍における拡散挙動を制御できる新しい可能性を示し、多くの分野への波及効果が見込まれる。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
概要に記したように、金属イオン種による拡散挙動の違い、特にホッピング拡散挙動の違いが実験で明確に現れてきた。これまでの結果から、これらホッピング挙動の違いは金属イオンのサイズによる効果が大きい。よりサイズの大きな金属イオンほど、ホッピングサイトとして使用出来るホールの数が減る(金属イオンは、自身のサイズよりも小さなホールサイトには移動できない)ので、ホッピング拡散が抑制される傾向にある。一方で、イオンの持つ電荷が予想以上にホッピング挙動(ホッピング拡散係数)に影響しないことが分かってきた。これは、まわりのイオン液体とのクーロン相互作用に、拡散挙動が縛られていないことを意味する。この理由はまだ明確ではないが、非常に重要な結果であり、これらのメカニズムを解明していく必要がある。また、こうした拡散挙動は、電極よりも少し沖合の拡散層が支配的であることが多いが、イオン液体の場合、電極極近傍の電気二重層領域(溶媒和層領域)において、リジッドな層が形成されているという報告がある。こうした溶媒和層内の拡散挙動が、全体の拡散挙動に影響している可能性もあり、今後調べていく必要がある。
|
Strategy for Future Research Activity |
これまでの実験によって、金属種の違いによる拡散挙動の違いが明確になってきた。そのメカニズムの一部は解明されつつあるが、一方で、Li+添加効果のメカニズムなど、明確になっていない部分もある。こうしたメカニズムの解明は、「拡散制御」という最終目的を達するには必須であり、今後推進していく必要がある。これまでのホッピングメカニズムは、分子間の空隙を単純にホッピングするものであったが、これに加えてイオン液体特有のドメイン構造の影響を考慮にいれていく必要があると思っている。過去の研究において、イオン液体は、極性部位と非極性部位に分かれた2種のドメイン構造を持つことが知られている。これまでは、これらを区別せずに検討をしてきたが、実際には、添加物イオンや、拡散する金属イオンの種類によって、どちらのドメインを主として拡散するかが異なってきているのではないかと考えている。実際に、最近の実験においても、そのような傾向が見られてきており、今後は、イオン液体種を変えるなどすることによって、これらのドメイン構造も変化させ、より詳しい拡散メカニズムの解明に取り組んでいきたいと考えている。加えて、溶媒和層内の拡散挙動についても調べていく予定である。
|
Research Products
(30 results)