2018 Fiscal Year Annual Research Report
Study of hopping-like diffusion behavior of metal ions at ionic liquid/electrode interface
Project/Area Number |
17H03041
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
今西 哲士 大阪大学, 基礎工学研究科, 准教授 (60304036)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | イオン液体 / 拡散 / ホッピング / 電極 / 金属イオン |
Outline of Annual Research Achievements |
前年に引き続き、イオン種依存性を詳しく調べていくと共に、電池などの電気化学デバイスへの応用を目指して「拡散プロセスの制御」を念頭に実験を行っていった。 前年において、Li+の添加による有効ホール濃度制御が金属イオンの拡散制御に非常に有効であることが確認されたが、本年度はLi+添加量を変化させた際の影響とその制御性について詳しく調べていった。その結果、ある一定範囲までは、添加したLi+に応じて有効ホール濃度がリニアに変化していくことが観察された。しかし、添加量がある一定量を超えると、ホッピング拡散を抑制する効果が少なくなり、さらに過剰量を添加すると、逆にホッピング拡散を促進する効果が観察された。詳しい解析の結果、Li+添加量が少ないとき(あるいは添加量がゼロのとき)と、過剰に添加したときとでは、金属イオンの拡散するドメインが異なることが分かってきた。 各種金属イオンの拡散パラメータの温度依存性を詳しく調べた。その結果、Au3+イオンにおける拡散障壁が、Ag+イオンのそれと比較して非常に小さいことが分かった。室温においては、Au3+イオンの方が、全体の拡散が早いことが分かっているが、これが主原因であると思われる。一方で、高温になると、Ag+イオンの方が拡散が早くなることが分かった。高温においても、拡散障壁はAu3+の方が低いことから、この原因はデバイス振動など、ホッピング頻度に関わるパラメータが原因ではないかと推測された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度の研究結果によって、本研究の目的の一つである、「拡散挙動の制御」に一歩近づいたのではないかと考えている。特に、Li+などの不活性な添加物を加えることによって、精密に有効ホール濃度が制御できることが明らかになったことは大きい。しかし、その一方で、添加物の効果が、拡散する金属イオン種によって大きく異なることの理由が未だ明らかになっていない。具体的には、Ag+イオン拡散に対する効果の方が、Au3+イオン拡散に対する効果よりもかなり大きい。加えた不活性添加物が、すべてホッピング拡散を抑制するために使われているわけではないことは、前年の研究から分かっていたが、どうも、実際にホッピング抑制に使用される添加物割合を、拡散する金属イオンとの相互作用が決めているようでもある。いずれにせよ、この現象は“拡散制御”という意味では、解決しなくてはならない課題であり、今後も探求を進めていく予定である。 また、各パラメータの温度依存性に関する結果も、いろいろな新しい知見を与えてくれた。これによって、さらなる拡散メカニズムの解明につながると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度の実験により、拡散する金属イオンが特定のドメイン内を拡散している可能性が示唆された。一般的に、イオン液体には極性ドメインと非極性ドメインが存在すると言われている。現在のところ、何も添加物がない場合、電荷を持つ金属イオンは極性ドメインを拡散していると考えられる。これが、添加物の効果によって、非極性ドメインを拡散するようになる可能性が示唆されたが、現段階ではこれは仮説に過ぎない。実験的な証明が必要になる。また、温度依存性の実験により、拡散パラメータの詳細な温度依存挙動が分かってきた。特に、Au3+イオンとAg+イオンの拡散挙動(拡散速度)が、ある温度において逆転する現象は、非常に興味深い。現在のところ、デバイ振動などの効果を考えているが、これにはクーロン相互作用の効果が入っている可能性もある。これまでの実験結果では、一見、まわりのイオン液体とクーロン相互作用の強いAu3+イオンの方が、Ag+イオンよりも拡散が早いことが不思議であった。むろん、拡散障壁が低いことが寄与しているものの、それだけではなかなか説明ができなかった。この結果を解析することによって、クーロン力がどのように寄与しているのかについても明らかにできる可能性があると考えている。
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Research Products
(19 results)